Ⅰ.精巣上体炎
頻度 ときどきみる
治療のポイント
・抗菌薬投与,局所冷罨法.
・若年者では,精巣捻転症との鑑別が重要.
・尿道カテーテル留置中の発熱時は,本疾患を考慮.
◆病態と診断
A病態
・尿道からの逆行性感染によって発症することが多い.
・血行性感染もある.
・小児で繰り返す場合,尿道狭窄や性路への尿管異所開口など先天性疾患の検索が必要.
B診断
・精巣上体の腫大や硬結,発赤,疼痛,発熱を認める.
・圧痛や腫脹は,精巣上体の一部から精巣上体全体,陰嚢全体に及ぶことがある.
・尿路感染症による排尿痛や排尿障害などの下部尿路症状を伴う.
・尿所見では,膿尿や細菌尿が認められることがある.
・血液検査では,白血球数上昇やCRPの高値を認める.
・超音波検査では精巣上体の腫大,カラードプラエコーでは血流の増強を認める.
◆治療方針
抗菌薬を投与し,症状が強い場合は局所を冷却する.
性感染症による逆行性感染と考えられる場合,淋菌やクラミジアに対する抗菌薬を投与する.
Px処方例 下記のいずれかを用いる.
1)レボフロキサシン(クラビット薬)錠(500mg) 1回1錠 1日1回 朝食後
2)セフカペン(フロモックス薬)錠(100mg) 1回1錠 1日3回 毎食後
3)セフトリアキソン(ロセフィン薬)注 1回1g 単回 点滴静注
■専門医へのコンサルト
・若年者で精巣捻転症が否定できない場合,専門医へコンサルトする.捻転発症後6~12時間以内に解除しないと壊死により精巣摘除を要する確率が高い.
■帰してはいけない患者
・高熱を呈する場合や,炎症が陰嚢全体に及ぶ場合は,入院治療を行う.
■患者説明のポイント
・硬結が残る可能性と,精路通過障害による不妊症の可能性を話す.
Ⅱ.精巣炎
頻度 ときどきみる
◆病態と診断
A病態
・ムンプスウイルスに起因する精巣炎が一般的.
・細菌性精巣上体炎が精巣に波及することもある.
B診断
・精巣の痛み,腫脹,発熱を認