診療支援
治療

泌尿器科領域のプライマリケア
primary care for urological diseases
野宮正範
(国立長寿医療研究センター・泌尿器外科医長(愛知))

 一般医・研修医が遭遇する頻度の高いと思われる泌尿器科領域の症状・症候とその対応を示す.

A尿性状の異常

 成人肉眼的血尿は,ほとんどが泌尿器科疾患によって生じる.尿路悪性腫瘍,前立腺肥大症,尿路結石症,尿路感染症を念頭におき,スクリーニングとして検尿,超音波検査,尿細胞診を行う.抗凝固薬服用中の肉眼的血尿であっても,尿路の精査は必要である.

 膀胱タンポナーデは,凝血塊が膀胱内に充満し尿が排出されないため,強い下腹部痛を呈する.腹部超音波検査で凝血塊と残尿を確認後,太めの多孔式ネラトンカテーテル(20F以上)を膀胱内に挿入し,生理食塩液の注入吸引を繰り返して凝血塊を完全に除去する.次に,3way尿道カテーテルに入れ替え,生理食塩液による持続膀胱灌流を行い凝血塊の形成を予防する.いずれの場合も早期に専門医へ紹介する.

B排尿の異常

 急性尿閉は,膀胱が緊満し尿を排出できず強い尿意や膀胱痛を呈するが,慢性尿閉では膀胱痛は乏しい.原因疾患は,男性では前立腺肥大症が一般的であるが,尿道狭窄,神経因性膀胱,女性の骨盤臓器脱でも尿閉をきたすことがある.アルコール摂取や感冒薬などの抗コリン作用を有する薬剤服用が誘因となることがある.尿閉に対して,導尿もしくは尿道カテーテル留置を行い,水腎症や腎機能障害について検査する.導尿困難な症例,水腎症,尿路感染症や腎機能障害を合併する場合は専門医へ依頼する.

 下部尿路症状(頻尿,夜間頻尿,排尿困難,尿意切迫感,尿失禁など)の原因となる疾患・病態は多様である.下部尿路症状のなかで男女ともに頻度が高いのは夜間頻尿であり,次に昼間頻尿,尿勢低下の順である.男性では前立腺肥大症,女性では過活動膀胱,腹圧性尿失禁,骨盤臓器脱を念頭に基本評価を行う.夜間頻尿のみを訴える場合は,夜間多尿や睡眠障害が原因であることが多い(詳しくは,「前立腺肥大症」,,「過活動膀胱」の

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