診療支援
治療

母斑
nevus
吉田雄一
(鳥取大学教授・皮膚科学)

頻度 よくみる(表皮母斑・脂腺母斑・太田母斑:1/1,000人,扁平母斑:1/100人,色素細胞母斑:ほとんどの人)

頻度 ときどきみる(間葉細胞系母斑)

ニュートピックス

・皮膚のみならず,ほかの臓器にも異常がみられる母斑症(神経線維腫症1型)に対して内服薬(MEK阻害薬)による治療が可能になった.

治療のポイント

・多くの病変は出生時からみられ,限局的な遺伝子の異常(いわゆるモザイク)と考えられている.

・患者(家族)の希望を考慮し,外科的な治療が主体となる.

・将来的に悪性化をきたす母斑もあり,注意を要する.

◆病態と診断

A病態

・疾患により原因(遺伝子)は異なるが,多くの場合,胎生期に生じた体細胞の遺伝子の異常(病的バリアント)により生じる.

・個体発生初期に異常が生じると,病変は広範囲となる.

・生殖細胞の遺伝子に異常がある場合には,皮膚以外の他臓器にも病変を合併し,母斑症とよばれる.

B診断

・発生部位や特徴的な臨床所見により,診断は比較的容易である.

ダーモスコピー(特殊な拡大鏡)が診断に有用な場合がある.

・悪性化が疑われる場合など,必要に応じて皮膚生検が行われる.

◆治療方針

A上皮細胞系母斑

1.表皮母斑

 表皮ケラチノサイトの過形成により生じ,黒褐色の疣状の小結節が集簇する.RAS遺伝子,FGFR3遺伝子,K10/K1遺伝子などの異常が報告されている.整容面で希望があれば,外科的切除,CO2 レーザー,液体窒素による治療を行う.

2.脂腺母斑

 毛包脂腺系(アポクリン腺を含む)原基の異常により生じ,頭部や顔面に黄白色の局面を呈する.成長とともに徐々に病変が隆起し,のちに二次性腫瘍を続発する可能性があるため,外科的切除が望ましい.RAS遺伝子の異常が報告されている.

Bメラノサイト系母斑

1.色素細胞母斑

 先天的あるいは後天的に生じる黒色結節である.病理組織学的に表皮あるいは真皮に母斑細胞の増殖を

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