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治療

爪の疾患(爪囲炎,陥入爪)
disease of the nail(paronychia,ingrown nail)
上出康二
(上出皮フ科クリニック・院長(和歌山))

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Ⅰ.爪囲炎

◆病態と診断

・急性型と慢性型がある.

・ほとんどが手指にみられ,足趾では原因の多くが陥入爪である.

・急性型は,ささくれを剥ぐ,指しゃぶり,爪噛み,甘皮を剥ぐといった微細な外傷から病原菌が侵入し発生する.爪囲皮膚は発赤腫脹し,拍動するような強い痛みを訴える.

・慢性型は,爪と周囲の組織を固着させている角層が頻回の水仕事などによる浸軟により破壊され,刺激物質が侵入して生じる刺激性皮膚炎が大部分である.疼痛,炎症は軽度で,爪囲皮膚に湿疹・亀裂を伴い,近位爪郭と爪甲の間にポケットの形成がみられる.

・慢性型ではEGFR阻害薬,タキサン系薬剤,レチノイドが陥入爪と同様の症状を呈することがあり,化学療法関連性爪囲炎とよばれている.

◆治療方針

A急性爪囲炎

 1回15~20分,1日5~6回の温浴を行う.また,抗菌薬の投与を行う.

 爪と接する皮膚にわずかな膿瘍が形成されてくるので,膿瘍を18Gの注射針で切開・排膿させる.麻酔は不要.切開後も温浴を実施.創部はワセリンを外用する.

 化学療法関連性爪囲炎は陥入爪と同様の処置を行う.

Px処方例

 ドキシサイクリン(ビブラマイシン)錠(100mg) 1回1錠 1日1回 夕食後

B慢性爪囲炎

 以前はカンジダが原因と考えられたが,カンジダは保菌であり,主体は湿疹反応なので抗真菌薬よりもステロイドが有効.

Px処方例

 ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(アンテベート)軟膏 1日数回 塗布

Ⅱ.陥入爪

◆病態と診断

・爪が周囲軟部組織に刺入して生じる異物肉芽腫反応で,ほとんどが母趾に生じる.

・深爪により取り切れなかった側爪溝に固着する爪が側爪郭を刺入するものが大部分.

◆治療方針

 爪と軟部組織が接するのを防ぐ.医療用弾性テープで陥入する部分の側爪郭を押し下げる,陥入する爪の下に綿花や割を入れた点滴チューブなどの緩衝材を差し込む,などが考えられ

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