診療支援
治療

下腿潰瘍
leg ulcers(ulcus cruris)
鹿児山浩
(富山大学・皮膚科学)

頻度 ときどきみる

◆病態と診断

A病態

・下腿潰瘍の原因は非常に多岐にわたるが,そのなかでも静脈うっ滞性潰瘍が最も頻度が高く全体の7~8割を占め,動脈もしくはリンパ管循環障害が1割である.そのほか,膠原病や血管炎,皮膚悪性腫瘍,壊疽性膿皮症をはじめとした炎症性皮膚疾患,感染症,外傷などが挙げられる.

・静脈うっ滞性潰瘍では,長時間の立ち仕事によるリンパ浮腫や深部静脈血栓症などが前提にあり,これに外傷などが加わることで生じることが多い.

糖尿病神経障害のある患者では皮膚の脆弱化がみられ,軽微な外傷でも傷がつきやすく,知覚鈍麻のため発見が遅れ,潰瘍・壊疽にまで進展する.

B診断

・原因の特定のため,既往歴や喫煙歴,職歴,潰瘍を生じた誘因や経過などの問診が重要である.

・潰瘍の性状や分布,疼痛の有無,潰瘍周囲皮膚の色調などの臨床的特徴から下腿潰瘍の原因を判断する.

・静脈うっ滞性の場合,下腿を中心に色素沈着を伴うことが多く,潰瘍は比較的浅く下腿遠位1/3~足背にみられやすい.立位での表在静脈の拡張の確認やドプラ聴診器,下肢静脈エコーで静脈の異常を精査する.

・動脈性の場合,疼痛の強い深い潰瘍が特徴である.足関節/上腕血圧比(ABI:ankle branchial pressure index)皮膚灌流圧(SPP:skin perfusion pressure)を測定し,生理的に評価する.そのほか,CTアンジオグラフィやMRアンジオグラフィも有用である.

・悪性腫瘍や炎症性皮膚疾患を疑った場合には,皮膚生検や創部培養が診断に有用であり,感染症を疑った場合には,細菌・真菌培養検査を行う.

◆治療方針

 下腿潰瘍の原因は多岐にわたる.そのため,潰瘍治療と並行して基礎疾患,合併症の精査を行い,治療の妨げとなっている要因の除去を行う必要がある.潰瘍に対しては,感染や浸出液の状態を評価し,適切な外用薬や創傷被覆

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