診療支援
治療

多嚢胞性卵巣症候群
polycystic ovary syndrome(PCOS)
松崎利也
(吉野川医療センター・副院長(徳島))

頻度 よくみる(生殖年齢女性の5~14%)

GL産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023

GL生殖医療ガイドライン(2021)

ニュートピックス

・2022年4月に,レトロゾール,メトホルミン,カベルゴリンなど,多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の診療に関する複数の薬剤が保険適用となった.

・日本産科婦人科学会,多嚢胞性卵巣症候群の診断基準改定案(2024)が公開されている.

治療のポイント

・「肥満を伴う症例」では減量を第1選択とする.

・「挙児希望のない症例」の月経不順には,黄体ホルモンで子宮内膜を保護する.

・「挙児希望のない症例」の多毛,ニキビには,経口避妊薬を用いる.

・「挙児希望のある症例」の「不妊治療」では,薬剤による排卵誘発や手術(腹腔鏡下卵巣開孔術)を行う.

◆病態と診断

A病態

・卵巣でアンドロゲンが過剰に産生され,肥満とインスリン抵抗性が病態を増悪させる.月経周期異常,多毛,不妊などをきたし,子宮内膜癌や生活習慣病の発症リスクを有する.

B診断

・日産婦2024改定案においては,下記①~③をすべて満たし,類似の病態をきたす他疾患を除外する.①月経周期異常,②多嚢胞卵巣またはAMH高値,③アンドロゲン過剰症(総テストステロン高値または多毛)またはLH高値

◆治療方針

 肥満や挙児希望の有無により治療法を選択する.

A肥満例

 5~10%以上の減量を指導する.減量が成功しない,または減量しても病態が改善しない場合はBの非肥満例と同様に対応する.

B非肥満例

1.挙児希望なし

a.月経不順と子宮内膜保護

 ホルムストローム療法(黄体ホルモンの周期的投与)を行い,子宮内膜を保護する.

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

1)ジドロゲステロン(デュファストン)錠(5mg) 1回1錠 1日2回 毎月1日からまたは毎月経周期17日目頃から10日間

2)メドロキシプロゲステロン(プロベラ)錠(2.5mg) 1

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