診療支援
治療

骨盤臓器脱
pelvic organ prolapse
竹村昌彦
(大阪府立病院機構大阪急性期・総合医療センター・産科・婦人科主任部長)

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GL産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023

GL女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版](2019)

ニュートピックス

・2022年に腹腔鏡下腟断端挙上術(メッシュグラフトを用いないもの)が保険収載された.経腟腹腔鏡手術(vNOTES)による治療の今後の普及が期待される.

治療のポイント

・治療目標はQOLの改善である.病態や病状の説明,教育によって患者の不安を取り除くことが重要な治療である.

・軽症例では,骨盤底筋体操,治療用下着,腟内リングペッサリーなどを用いた保存的治療によるQOL改善が可能である.手術治療ではリスクについても十分理解したうえでの患者の希望(インフォームド・チョイス)が重要である.

・生活改善や骨盤底筋体操で改善が得られない尿失禁については,切迫性尿失禁に対しては薬物療法,腹圧性尿失禁に対しては手術治療が適応となる.

◆病態と診断

・骨盤底筋は,分娩時外傷や伸展によって損傷をうける.

・その後の閉経に伴う低エストロゲン状態や,肥満,老化による萎縮などが骨盤臓器脱を誘発する.

・十分に腹圧をかけた状態での腟,外陰部の観察を行い,POP-Qスコアに記載することで,下垂の部位と程度を客観的に評価し,症状の解析と治療方針の決定を行う.

・中部尿道の支持構造の脆弱化が腹圧性尿失禁(SUI)の原因となる.

・切迫性尿失禁(UUI)は過活動膀胱により発症するが,骨盤臓器脱はその原因となりうる.

◆治療方針

 腟口に膨隆を触れて,その他の症状はなく受診する患者も多い.このような患者については,骨盤臓器脱の病態についてよく説明して,不安を取り除いたうえで,生活習慣改善と骨盤底筋体操の指導を行う.通常それ以上の治療は必要としない.

 重量物の運搬や長時間の立位などを必要とする職業歴,生活歴を有する患者が多い.また,長期にわたる慢性的な便秘歴をもつ患者も多い.生活習慣の改善指導や便

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