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治療のポイント
・良性腫瘍の場合,腫瘍径6cm以上で手術適応の目安となる.
・年齢,妊孕性温存の希望の有無,症状に応じて術式を決定する.
・術後病理診断で境界悪性腫瘍と判明し追加手術を要することもある.
◆病態と診断
A病態
・上皮性,性索間質性,胚細胞の腫瘍に大別される.
・良性腫瘍としては,上皮性では内膜症性嚢胞,漿液性腺腫,粘液性腺腫,性索間質性では線維腫,胚細胞では成熟奇形腫がある.
・境界悪性腫瘍としては上皮性の漿液性,粘液性,漿液粘液性が代表的である.
・境界悪性腫瘍は間質浸潤が5mm以内の腫瘍である.
・漿液性境界悪性腫瘍は,浸潤性と非浸潤性の腹膜インプラントが特徴的である.非浸潤性の予後は良好であるが,浸潤性は低異型度漿液性癌と同様の転帰をとり予後に影響する.
・内膜症性嚢胞や成熟奇形腫からまれに悪性転化が認められる.40歳以上,10cm以上,嚢胞の急速な増大が内膜症性嚢胞の悪性化のリスクである.
B診断
・超音波断層法やMRIなどの画像所見で充実性部分の存在,隔壁の不整などから悪性腫瘍を疑うことはできるが,境界悪性腫瘍と術前診断することは容易ではない.最終診断は病理組織診断に委ねる.
・良性腫瘍として手術を行い術後に境界悪性腫瘍と病理診断されることがある.
・腫瘍マーカーであるCA125やCA19-9の数値から良性,境界悪性,悪性の鑑別に応用できるほどの特異性はない.
・婦人科癌検診,他科の画像検査から無症状の卵巣腫瘍が偶然発見されることが多い.一方,茎捻転から急性腹症となり緊急手術になることもある.
・成熟奇形腫ではまれに抗NMDA受容体抗体脳炎による精神神経症状を呈することがある.
・機能性嚢胞と腫瘍の鑑別は必須である.術前には経腟超音波検査で腫瘍の再確認を行う.
◆治療方針
原則として手術が行われる.手術の目的は卵巣腫瘍の組織診断を確定することである.良性腫瘍は年齢,大きさ