頻度 よくみる(0.5~2%)
GL産婦人科診療ガイドライン 産科編2023
治療のポイント
・妊娠悪阻に対して早期に治療を開始しないことにより重症化を引き起こす.
・安静と休養が症状緩和につながる.また,ビタミンB6 投与が症状緩和に効果がある.
・少量頻回の食事摂取と水分摂取を行う.
・脱水に対して十分な輸液療法とビタミンB1 補充を行う.
◆病態と診断
A病態
・妊娠初期の悪心・嘔吐症状すなわち「つわり」は,多くの妊婦において認められており,妊娠16週ごろまでのつわりは,70~85%の妊婦が経験する.
・悪心・嘔吐の症状が重症であるために医療的介入が必要となるような場合を妊娠悪阻とし,診断基準が明確でないために発生頻度の報告には幅がある.「他の疾患がない妊娠初期の悪心・嘔吐を伴い,尿ケトン陽性などを示す急性の飢餓症状,5%以上の体重減少を伴い,時として電解質異常,甲状腺機能異常,肝機能異常などを呈することがある病態」とされ,胎盤形成,食欲,悪液質に関与するGDF15とIGFBP7が妊娠悪阻に関与する可能性が示されている.
B診断
・妊娠5~6週ごろから消化器症状として食欲不振,胸やけ,口渇,悪心,嘔吐,唾液の過剰分泌などがみられる.多くは妊娠12~16週までには軽快する.
・妊娠17週以降とりわけ20週以降になっても症状が持続する場合には他の疾患の合併を考慮する必要がある.
・理学的所見として皮膚や口唇の乾燥などの脱水症状がみられ,尿ケトン陽性を認める.
◆治療方針
妊娠悪阻の治療あるいは予防に対する考え方は本邦と欧米においては大きく異なっている.本邦においては精神療法,栄養代謝障害や脱水症に対する薬物輸液療法が基本となっているが,海外ではビタミンB6 投与,ショウガエキス,鍼灸など妊娠悪阻の予防対策および制吐薬(ドーパミン拮抗薬,ヒスタミンH1 受容体拮抗薬,セロトニン5-HT3 受容体拮抗薬)