診療支援
治療

絨毛性疾患
gestational trophoblastic disease
梶山広明
(名古屋大学大学院教授・産婦人科学)

頻度 あまりみない

ニュートピックス

・化学療法に抵抗性を示す難治性絨毛性腫瘍に対する免疫チェックポイント阻害薬の有効性が報告されはじめている.ただし日本では高頻度マイクロサテライト不安定性を有する絨毛癌のみ保険適用となる.

治療のポイント

・胞状奇胎後は絨毛性腫瘍の早期発見のため定期的なhCG(ヒト絨毛ゴナドトロピン)の測定が必要である(mIU/mLで測定する).

・侵入奇胎,臨床的侵入奇胎,および奇胎後hCG存続症に対して汎用される治療は,メトトレキサートあるいはアクチノマイシンDによる単剤療法である.

・絨毛癌および臨床的絨毛癌に対する治療の中心は化学療法であり,メトトレキサート,アクチノマイシンD,エトポシドの3剤を含む多剤併用療法が初回治療の第1選択となる.

・胎盤部トロホブラスト腫瘍(PSTT:placental site trophoblastic tumor)や類上皮性トロホブラスト腫瘍(ETT:epithelioid trophoblastic tumor)では子宮全摘出術などの手術療法が治療の中心となる.

◆病態と診断

A病態

・絨毛性疾患は,胎盤栄養膜細胞の異型および増殖を呈する疾患の総称である.「絨毛性疾患取扱い規約 第3版」に基づいて,胞状奇胎,侵入胞状奇胎(侵入奇胎),絨毛癌,PSTT,ETT,存続絨毛症に臨床分類される.

・胞状奇胎は妊娠の異常であり,父親由来の雄核発生の2倍体である全胞状奇胎(全奇胎)と2精子受精による3倍体である部分胞状奇胎(部分奇胎)に分類される.

・侵入奇胎は胞状奇胎絨毛が子宮筋層内へ浸潤したものであり,全胞状奇胎の15~20%,部分胞状奇胎の1~4%に続発し,約1/3の症例に肺転移を認める.

・絨毛癌は全胞状奇胎の1~2%に続発するとともに,分娩・流産などあらゆる妊娠に続発しうる.侵入奇胎とともに化学療法が著効するという共通点を有する.肺,脳,

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