診療支援
治療

癒着胎盤
placenta accreta spectrum
松崎慎哉
(大阪国際がんセンター・婦人科副部長)

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ニュートピックス

・母体年齢の上昇,帝王切開率の増加,体外受精による妊娠の増加に伴い,癒着胎盤のリスク因子を有する妊婦が増加しているため,癒着胎盤の頻度は増加している(約0.3%).

治療のポイント

・癒着胎盤を合併している場合は経腟分娩,帝王切開ともに分娩時大量出血を合併する可能性が高い.そのため,癒着胎盤の大きな危険因子である前置胎盤(約50倍のオッズ比)を有する患者では,分娩前に癒着胎盤の合併がないかの検索が望ましい.帝王切開の既往がない場合で約3%,1回の既往で約11%,2回の既往で約40%の確率で癒着胎盤を合併すると報告されている.

・前置胎盤以外の危険因子としては,子宮動脈塞栓術既往,前回癒着胎盤,体外受精による妊娠は癒着胎盤の強い危険因子(オッズ比は約10倍)である.子宮手術既往,母体高年齢なども危険因子であることを認識する.

◆病態と診断

A病態

・さまざまな原因で子宮の脱落膜が欠損もしくは菲薄化している場合に絨毛組織は子宮筋層内に侵入し,結果的に癒着胎盤となる.子宮体下部では癒着胎盤が起こりやすく(前置胎盤),子宮手術の既往がある場合(主に帝王切開術)や体外受精(内膜の菲薄化)が危険因子となりうる.

・分娩時に胎盤の自然剥離が困難であり,しばしば分娩時大量出血をきたす.

・2018年に国際産婦人科連合は癒着胎盤の分類の呼称を変更した.単純癒着胎盤をplacenta creta(筋層に付着),侵入胎盤をplacenta increta(筋層に浸潤),穿通胎盤をplacenta percreta(胎盤の浸潤は漿膜面に達する)と分類する.

B診断

経腟超音波診断法もしくは磁気共鳴画像診断(MRI)が主に用いられる.穿通胎盤のような重症例は診断しやすいが,軽症例では診断はしばしば困難である.また,癒着胎盤を否定することも容易ではなく,癒着胎盤の診断には熟練を要する.

・癒

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