GLJRC蘇生ガイドライン2020
治療のポイント
・新生児蘇生では呼吸の確立が最も重要であり,有効な自発呼吸のない新生児に対しては,生後60秒以内に人工呼吸を開始する(胸骨圧迫を重視する成人の一次救命処置とは大きく異なる点).
・有効な人工呼吸を行っても心拍60/分未満の徐脈が持続する場合,胸骨圧迫と酸素を用いた人工呼吸を連動して実施する.
・蘇生中は児の体温維持(36.5~37.5℃)にも留意する.
◆病態と診断
A病態
・新生児仮死は,胎児や出生直後の新生児に生じた低酸素による呼吸抑制と徐脈が原因であり,進行すると無呼吸と心停止に至る.
・1次性無呼吸では心拍数は保たれており,気道開通や皮膚刺激で自発呼吸が出現する.2次性無呼吸では心拍数は低下しており,蘇生の初期処置には反応しない.
B診断
・蘇生の適応は,①早産児,②弱い呼吸・啼泣,③筋緊張低下の3項目を評価し判断する.いずれかに該当すれば「2020年版 NCPR(neonatal cardiopulmonary resuscitation)アルゴリズム」(NCPR2020)に則って蘇生の初期処置(保温,体位保持,気道開通,皮膚乾燥と刺激)を開始する.
・Apgarスコアは出生1分後,5分後に判定し,4点未満が重度仮死(2度仮死),7点未満が軽度仮死(1度仮死)と定義される.生後10分値が5点以下の場合,低体温療法の適応について評価する.
◆治療方針
A出生直後の児の蘇生
蘇生の初期処置はおおむね30秒間行い,呼吸と心拍を評価する.自発呼吸なし,あるいは心拍100/分未満の場合は2次性無呼吸と判断し,パルスオキシメーターを右手に装着し,生後60秒以内に人工呼吸を開始する(救命の流れ).人工呼吸は20~30cmH2O程度の換気圧で開始し,その後は胸郭上昇が確認できる最小の圧を用いて40~60回/分のペースでおおよそ30秒実施する.在胎35週以