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GL肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)
治療のポイント
・新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)の原因となる基礎疾患の治療と増悪因子の是正を行ったうえで,体血圧を維持しながら肺血管抵抗を低下させる呼吸循環管理を目標とする.
◆病態と診断
A病態
・さまざまな原因により出生後に低下すべき肺血管抵抗が下がらず,胎児期の肺高血圧状態が続くことで重篤な低酸素血症をきたす病態をPPHNとよぶ.
・肺血管抵抗が低下せず肺動脈圧の絶対値が高い型(胎便吸引症候群,横隔膜ヘルニア,肺低形成など)と,体血圧低下により相対的に肺動脈圧が高い型(新生児仮死,敗血症,一過性心筋虚血など)がある.
B診断
・高濃度酸素投与が行われても低酸素血症が持続し,SpO2 の上下肢差を認める場合にPPHNを疑う.
・心エコー検査で先天性心疾患がなく,卵円孔/動脈管レベルでの右左短絡など高度の肺高血圧の所見がみられる.
・総肺静脈還流異常症は心内構造異常がなく,鑑別が難しいため注意が必要である.
◆治療方針
A肺血管拡張薬
吸入一酸化窒素(iNO:inhaled nitric oxide)は選択的に肺血管を拡張するため,肺血管拡張療法の第1選択薬である.わが国ではiNOの適応に在胎期間に関する制限がなく,早産児のPPHNに対するiNOの有効性と安全性が報告されている.iNOが使用できない場合やiNO抵抗性のPPHNに対しては,ほかの肺血管拡張薬を使用する.
1.iNO
Px処方例
一酸化窒素(アイノフロー)吸入用800ppm 吸入濃度20ppmで開始し,開始後4時間は20ppmを維持.酸素化の改善に従い5ppmまで減量し,安全に離脱できる状態になるまで吸入を継続,さらに1ppmまで漸減して中止
!注意 超早産児では10ppm以下で開始することが多い.
!注意 iNOを急に終了した場合に,肺動脈圧の上昇または酸素化の悪化がみ