診療支援
治療

母子感染予防
prevention of mother-to-child transmission
野崎昌俊
(大阪府立病院機構大阪母子医療センター・周産期・小児感染症科部長)

ニュートピックス

・バルガンシクロビルが症候性先天性サイトメガロウイルス感染症の適応追加承認を取得した.

治療のポイント

・病原体ごとの症状,感染経路,予防法を把握する.

・分娩方法,母乳栄養の可否に注意を払う.

・短期予後のみならず,発達発育など長期的な予後を見据えた適切な治療が必要である.

Ⅰ.B群溶血性レンサ球菌(GBS)

◆病態と診断

・早発型(生後1週間未満),遅発型(1週間~3か月),超遅発型(3か月以降)に分類される.日本では遅発型と超遅発型が近年増加している.

◆治療方針

 妊婦のGBS保菌確認の培養検査,分娩時の抗菌薬の予防投与基準が決められており,早発型は予防できる.

Px処方例 分娩時に母体に下記を用いる.

 アンピシリン(ビクシリン)注 初回:1回2g 静注,以降4時間ごと:1回1g 静注

Ⅱ.単純ヘルペスウイルス(HSV)

◆病態と診断

A病態

性器ヘルペス初感染の妊婦の母子感染率は25~60%と高いが,既感染の再燃による母子感染率は2%未満である.子宮内感染(先天性HSV感染症)は4~5%未満である.新生児HSV感染症は生後1~3週間に好発する.

B診断

皮膚の水疱髄液全血のPCR検査

◆治療方針

 妊婦はアシクロビルで加療する.分娩時に性器病変が認められる場合は帝王切開が推奨される.新生児HSV感染症は,疑いがあればすみやかに加療する.

Px処方例 新生児HSV感染症では下記を用いる.

 アシクロビル(ゾビラックス)注 1回20mg/kg 1日3回 静注,皮膚・眼・粘膜型は14日間,中枢神経型,播種型は最低21日間

Ⅲ.水痘ウイルス

◆病態と診断

A病態

・発症が分娩21日以内であれば新生児水痘となりうる.分娩5日前から2日後に発症した場合は移行抗体がないため新生児の重症化リスクが高い.

・妊娠初期であれば先天性水痘症候群の可能性がある.

B診断

特徴的な皮疹血清抗体価皮膚病変のP

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