診療支援
治療

肥厚性幽門狭窄症
hypertrophic pyloric stenosis
木下義晶
(新潟大学大学院教授・小児外科学)

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治療のポイント

・初期評価は腹部単純X線写真や腹部超音波によって行うが,評価ができない場合は,すみやかに小児消化器を専門とする小児科医,または小児外科医のいる医療機関への紹介を検討する.

・本症により低K性低Cl性アルカローシスの病態を呈することがあり,初期治療として適切な輸液療法を行う.

・内科的治療法として硫酸アトロピン療法,外科的治療法として幽門筋切開術(Ramstedt手術)がある.

◆病態と診断

A病態

・胃幽門部の肥厚による通過障害が原因で,生後2~3週間頃から始まる非胆汁性の噴水状嘔吐を主徴とする疾患.

・発症頻度は出生1,000人あたり1~5人前後で,男女比では4:1と男児に多い.家族性があり,第1子に多く,人工乳栄養児に多いとされている.

・先天性の遺伝的因子と,幽門部のホルモン制御,細胞外基質,平滑筋線維,成長因子,マクロライド系抗菌薬,Cajal細胞,神経支配,一酸化窒素,母体の喫煙,経管栄養などの環境因子が指摘されている.

B診断

・視診にて上腹部膨隆と充満した胃の蠕動運動を認めることがある.

・触診上,右上腹部にオリーブ様腫瘤を触知する.

1.検査

・腹部単純X線写真では胃内に空気が大量に貯留し,single bubbleの像を呈することが多い.

・腹部超音波検査が最も有用である.幽門筋の肥厚を示す短軸像のdoughnut sign,長軸像のuterine cervix sign,shoulder signなどがみられる.超音波検査にて幽門筋肥厚が4mm以上,幽門管長が15mm以上を本症の診断基準とすることが多い.

・上腹部消化管造影検査では,造影剤が狭窄,延長した幽門部をわずかに通過する所見をstring sign,umbrella sign,beak sign,mushroom signなどとよぶ.

◆治療方針

 まず初期治療を行い,引き続き内科的治療または外科的

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