診療支援
治療

小児の消化管異物
foreign body in the gastrointestinal tract in children
菱木知郎
(千葉大学大学院教授・小児外科学)

頻度 情報なし

治療のポイント

・すべての消化管異物に対して緊急対応が必要なわけではなく,異物の種類により緊急性は異なる.

・固形異物では電池類,磁石,鋭利な異物などは緊急対応が必要となる可能性があり,専門施設へ紹介する.

・食道異物が疑われる場合や有症状である場合は早期に摘出を検討すべきであり,専門施設へ紹介する.

・上記以外では経過観察が可能なことが多い.

・本項では物理的な障害をきたす固形消化管異物について扱う.

◆病態と診断

A異物の種類と病態

1.ボタン電池

・食道内のボタン電池は種類によらず緊急摘出の適応である.特にリチウム電池の食道内停留はきわめて危険な病態で,高度緊急対応が求められる.リチウム電池は起電力が高いうえ,直径が大きいものが多いため胃内にとどまり症状を呈しやすい.

・胃内のボタン電池は,リチウム電池であるかそれ以外かにより緊急度が異なる.リチウム電池の場合,あるいは直径が大きい(5歳以下で直径20mm以上)場合,症状がある場合は緊急摘出を行う.

・小腸以遠の場合は排泄を待つが,リチウム電池である場合は専門施設に紹介するのが望ましい.

2.磁石

・単一の小さい磁石であれば症状を起こすことは通常ない.

・複数の磁石を誤飲した場合,2つの磁石間に消化管壁が介在すると穿孔や瘻孔をきたし,腹膜炎や消化管壊死の原因となりうる.死亡例の報告もある.

・食道内に停留する磁石,複数の磁石,有症状例は摘出の適応となり専門施設に紹介する.

3.鋭利な異物

・釘,画鋲,安全ピン,爪楊枝,魚骨などの誤飲は頻度が高い.

・食道内に停留する場合は嚥下障害をきたしやすい.

・消化管穿孔,消化管外迷入,膿瘍形成,腹膜炎,瘻孔形成,虫垂炎,肺への穿通,食道大動脈瘻などが報告されている.

・爪楊枝,魚骨は穿孔をきたしやすい.

4.食物

・食物による消化管閉塞は,好酸球性食道炎,食道閉鎖症術後,胃食道逆流症,食道アカラシアなど,背景

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