診療支援
治療

先天性甲状腺機能低下症
congenital hypothyroidism
長崎啓祐
(長野県立こども病院・内分泌代謝科副部長)

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GL先天性甲状腺機能低下症マススクリーニングガイドライン(2021年改訂版)

治療のポイント

・乳児期早期の重篤な甲状腺機能低下は,神経系の発達に影響を及ぼすため,可及的すみやかに精査・加療を行う必要性がある.

・治療はレボチロキシンの内服を行うが,治療は重症度に応じて,「先天性甲状腺機能低下症マススクリーニングガイドライン(2021年改訂版)」を参考に行う.

・一過性の甲状腺機能低下症が存在するため,治療の必要性を適宜評価する.

◆病態と診断

A病態

・先天性甲状腺機能低下症は,胎生期または周産期に生じた甲状腺の形態または機能異常による先天的な甲状腺ホルモンの欠乏をきたす疾患である.

・甲状腺ホルモンは,小児においては成長発育や神経系の発達に重要なホルモンであり,その欠乏によって非可逆的な成長障害精神運動発達の遅れをきたしうる.

・病因としては,甲状腺形成異常(異所性甲状腺が最も多い)と甲状腺ホルモン合成障害に大別されるが,軽症例では分類不明な場合も少なくない.

B診断

新生児マススクリーニングでろ紙血甲状腺刺激ホルモン(TSH)高値として,生後1か月以内に発見される.

・重症例では,初診時に遷延性黄疸・四肢冷感・不活発などの症状を認めるが,軽症例では目立った症状を呈さない.

・検査では血中TSH高値,甲状腺ホルモン(FT4・FT3)は,正常から低値である.その他大腿骨遠位骨端核の大きさや甲状腺エコー所見を参考にする.

◆治療方針

 合成レボチロキシン(L-T4)による早期補充により非可逆的な脳障害を防ぎ,正常な成長・発達を促すことである.「先天性甲状腺機能低下症マススクリーニングガイドライン(2021年改訂版)」も参照されたい.

A初期治療

1.最重症例

 初診時TSH350μIU/mL,FT4 0.3ng/dL,サイログロブリン12ng/mL,体重3.1kg,甲状腺エコーで正所に甲

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