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治療のポイント
・眼底出血をきたす疾患としては,糖尿病,高血圧,動脈硬化,外傷,血液疾患などがある.鑑別診断を行い,出血の原因を特定することが重要である.
・出血の存在部位により後述のように分類され,特徴的な形態を示すことが多い.
・検眼鏡的検査に加えて,蛍光眼底造影,光干渉断層計(OCT)や超音波検査も診断に有用である.
・視機能に影響を及ぼす場合は,治療時期を適切に判断しながら病態に応じて内科的,外科的治療を行う.全身疾患に伴う眼底出血の場合,原疾患の治療を並行して行う.
Ⅰ.網膜前出血
◆病態と診断
・網膜内境界膜と後部硝子体との間に貯留した出血である.円板状で網膜表面を覆い,時間経過とともに上縁が水平となってニボーを形成する.
・糖尿病網膜症や網膜細動脈瘤破裂,バルサルバ網膜症やテルソン症候群などでみられ,部位的には黄斑部が多い.
・網膜内境界膜と神経線維層との間の出血(内境界膜下出血)も通常は網膜前出血に含める.
◆治療方針
出血が黄斑部にかかり,視力低下を伴う場合,硝子体手術を考慮する.
Ⅱ.網膜表層・深層出血
◆病態と診断
・網膜表層出血は神経線維層の出血で,神経線維の走行に沿って放射状・線状・火炎状の形をとる.網膜静脈閉塞や糖尿病網膜症でしばしばみられる.高血圧に伴う出血では表層出血を生じやすい.
・網膜深層出血は外網状層から内顆粒層の出血で,点状,斑状,しみ状で,暗赤色を呈する.解剖学的に構成細胞が網膜に垂直方向に分布しているため,出血は類円形に広がる.小さいものを点状出血,直径50μm以上のものを斑状出血とよぶ.糖尿病網膜症でみられることが多い.
◆治療方針
全身疾患に伴う眼底出血の場合,原疾患の治療を行う.網膜静脈閉塞や糖尿病網膜症で黄斑浮腫を伴う場合,抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬の硝子体内注射を行う.
Ⅲ.網膜下出血
◆病態と診断
・視細胞層と網膜色素上皮層との間の暗