頻度 あまりみない
Ⅰ.化学外傷
治療のポイント
・眼科救急疾患で最も緊急性が高く,すぐに洗眼を開始することが重要である.
・来院前に電話連絡を受けた時点で,患者にすぐに水道水での十分な洗眼をするように指示する.
・来院してからもまず生理食塩液などで十分に洗眼を行う.
◆病態と診断
・洗剤や漂白剤,実験試薬,石灰,セメントなどの化学物質の飛入が多い.
・眼痛,流涙,視力低下,充血,結膜浮腫などの症状がある.
・眼瞼を含めて顔面も受傷している場合は皮膚科に診察依頼をする.
・強酸や強アルカリは重症化しやすい.強アルカリは融解壊死を生じ,組織に浸透していくので強酸に比べて重症化しやすく,角膜穿孔に至ることもある.角膜上皮幹細胞がある角膜輪部が蒼白になっていると予後不良である.結膜の瘢痕化や角膜混濁,虹彩炎,緑内障,白内障などを引き起こすことがある.
◆治療方針
化学物質が飛入したとの連絡を受けたら直ちに洗眼するよう指示する(10分以上).
来院したら,ベッドに仰臥位とし,開瞼した状態で生理食塩液などによる点滴で30分以上持続洗眼を行う(1~2L).異物が残存しているようなら綿棒などですべて除去する.洗眼終了から5~10分経ってからpH試験紙で中性になるのを確認し,中性になるまで再度洗眼を追加する.
その後の治療は角膜や結膜の障害の程度により異なるが,抗菌薬やステロイドを用いた治療が中心となる.眼圧が上昇している場合は眼圧下降治療を行う.軽症の場合は抗菌薬の眼軟膏や点眼薬で治癒するが,重症の場合はステロイドを併用した治療が必要で入院治療となることがあり,早急な眼科医の診察が必要である.
Px処方例 治療の段階に応じ,下記を適宜使い分ける.
(処置用点眼麻酔薬)
1)オキシブプロカイン(ベノキシール薬)点眼液 1回1滴 点眼
(洗眼液)
2)生理食塩液薬 1回1~2L 開瞼した状態で点滴
(処置後治療薬