頻度 ときどきみる(米国および韓国では,非動脈炎性虚血性視神経症は人口10万人あたり10人程度とされる.動脈炎性虚血性視神経症はその半分以下の頻度である)
治療のポイント
・動脈炎性前部虚血性視神経症は両眼失明のリスクが高く,僚眼への発症予防で直ちにステロイドパルス治療を開始する必要がある.
・非動脈炎性前部虚血性視神経症に対して有効な治療法はない.
◆病態と診断
A病態
・視神経の栄養血管の閉塞により起こる急性の視神経障害である.
・血管閉塞が生じた部位によって前部虚血性視神経症(AION:anterior ischemic optic neuropathy)と後部虚血性視神経症(PION:posterior ischemic optic neuropathy)に分けられる.
・AIONは視神経乳頭部における短後毛様動脈の血流障害を原因とし,乳頭腫脹を伴う.
・AIONは,巨細胞性動脈炎を原因とする動脈炎性前部虚血性視神経症(A-AION)と非動脈炎性前部虚血性視神経症(NA-AION)に分類され,A-AIONは緊急疾患である.
・PIONは視神経鞘軟膜毛細血管叢の分枝の血流障害を原因とし,乳頭腫脹は伴わない.
B診断
・典型例では起床時に視機能障害を自覚し,自覚してからは見え方の変化はほぼない.
・視野異常パターンは多様だが,水平半盲が多い.視力は正常から光覚なしまでさまざまである.
・片眼発症であれば患眼の相対的瞳孔求心路障害(RAPD:relative afferent pupillary defect)が陽性となる.
・視神経乳頭は典型例では蒼白浮腫を呈し,乳頭周囲に出血や軟性白斑を伴うが,発赤腫脹もありうる.
・フルオレセイン蛍光眼底造影検査で,造影初期に視神経乳頭の充盈遅延を認める.
1.NA-AION
・糖尿病,高血圧,脂質異常症,夜間低血圧,睡眠時無呼吸症候群を有する高齢者に多い.
・片頭痛や