診療支援
治療

鼓膜炎
myringitis
喜夛淳哉
(浜松医科大学・耳鼻咽喉科・頭頸部外科学)

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治療のポイント

・激しい耳痛を主訴とする急性鼓膜炎と,持続する耳漏を主訴とする慢性鼓膜炎に分類される.

・急性鼓膜炎は急性中耳炎と関連し,慢性鼓膜炎は外耳の機能障害に関連すると考えられているが,詳しい病態は解明されていない.

・両者とも鼓膜の炎症が特徴であるが,臨床症状や治療方針が異なり,顕微鏡や内視鏡を用いた鼓膜の観察が重要となる.

◆病態と診断

A急性鼓膜炎

・鼓膜表面,時に外耳道に及ぶ黄褐色の内容液を伴う水疱形成を特徴とし,水疱性鼓膜炎ともよばれる.

・片側性がほとんどで,高度な耳痛を伴うことが多く,発症早期に大多数が医療機関を受診する.

・約半数に高音域の感音難聴を伴い,2/3程度は回復するとされる.

・原因に諸説あるが急性中耳炎を伴うことが多く,水疱内容液の細菌検査により肺炎球菌やインフルエンザ桿菌などの急性中耳炎の起因菌が検出されることから,急性中耳炎の一亜型と考えられている.鼻かみや咳嗽などの中耳腔の圧変化が誘因になる場合もある.

・水疱形成を伴う点でラムゼイ・ハント症候群との鑑別を要する.

B慢性鼓膜炎

・鼓膜表面の肉芽を特徴とする肉芽性鼓膜炎と,肉芽を伴わないびらん性鼓膜炎に分けられる.

持続する耳漏および耳閉感瘙痒感を訴えることが多く,疼痛は少ない.

・起因菌として緑膿菌や黄色ブドウ球菌,真菌などが検出される.

・過去に耳処置や手術を受けたことのある患者が多く,鼓膜上皮層の遊走能障害が原因と考えられているが,詳細は不明である.

・真珠腫性中耳炎や好酸球性中耳炎などの肉芽を伴う中耳疾患の除外が重要である.

◆治療方針

A急性鼓膜炎

 疼痛が強い場合は急性中耳炎に準じて感受性のある抗菌薬の投与を行う.抗菌薬投与前に水疱を切開し,内容液の細菌培養検査を提出する.

 なお,感音難聴に対するステロイド全身投与についてはエビデンスが得られていない.

Px処方例 下記などのペニシリン系抗菌薬

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