診療支援
治療

慢性(化膿性)中耳炎
chronic(suppurative)otitis media
小森 学
(聖マリアンナ医科大学主任教授・耳鼻咽喉科学)

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ニュートピックス

・日本耳科学会用語委員会より「中耳の慢性炎症性疾患の概念と用語について」が提唱され,それぞれの疾患概念と相互関係などが整理された.

治療のポイント

・耳漏が反復し停止しないものから単純穿孔のみを認める場合まで,多彩な病態を呈する.

・年齢,患者の希望,重症度などに応じて,保存的加療の耳処置,点耳薬などの薬物治療,外科的治療を要する場合は鼓室形成術や乳突削開術の適応の有無を判断する.

◆病態と診断

A病態

・「中耳腔や乳突蜂巣の慢性炎症が3か月以上持続する状態」として定義される.広義には中耳真珠腫,癒着性中耳炎なども含まれるが,中耳腔の慢性炎症が持続し,鼓膜緊張部に穿孔を伴ったものを指すことが多い.鼓膜穿孔の残存のみで耳漏のない例を慢性穿孔性中耳炎として区別することもある.

・一般細菌感染による炎症に起因しない難治性中耳炎として,結核性中耳炎,好酸球性中耳炎,ANCA関連血管炎性中耳炎などがある.

B診断

耳漏が多量,外耳道が腫脹している場合などを除き,耳鏡による視診で診断が可能である.経時的な変化をとらえるためにも電子スコープなどで記録することが望ましい.

・多くの場合には純音聴力検査で気骨導差を伴う難聴を認める.

・きわめて小さな穿孔を検出する検査法としてティンパノメトリーがあり,B型のティンパノグラムを呈する.

・鼓膜閉鎖した際の聴力改善予測は鼓膜穿孔閉鎖検査(パッチテスト)を行うことで可能となる.

◆治療方針

 慢性中耳炎治療の目的は,①耳漏を停止し日常生活のQOLを改善する,②鼓膜穿孔によって生じた伝音難聴を改善する,の2点である.2019年より鼓膜穿孔治療薬を使用した治療が保険収載されたことから,治療の選択肢が増えた.

A耳漏への対応

 治療の基本はどの細菌種に対して治療を行うかという点である.頻度が高いのはグラム陰性桿菌や黄色ブドウ球菌である.MRSAが検出

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