頻度 あまりみない
治療のポイント
・深頸部膿瘍は,重症化すると致命的となる疾患である.疑う症状や所見がある場合には,躊躇せず画像検査を行う.
・炎症の進行に伴い,気道狭窄や敗血症など重篤な状態を引き起こす.早めの対応が必要となる.
・深頸部膿瘍と診断された場合には,抗菌薬投与に加え,頸部切開による排膿を行う.
◆病態と診断
A病態
・深頸部膿瘍は,扁桃炎,扁桃周囲膿瘍,咽喉頭炎,唾液腺炎,齲歯,リンパ節炎などの感染巣や,食道・気管・咽頭の損傷などにより,細菌が頸部間隙内に侵入し,化膿性炎症が組織間隙で広がり,膿瘍を形成したものである.
・Streptococcus属,嫌気性菌であるPrevotella属,Peptostreptococcus属,Bacteroides属などが主な原因菌であり,好気性菌と嫌気性菌の混合感染であることが多い.
B診断
・臨床所見:発熱,頸部腫脹,疼痛などの症状に加え,炎症の進展による気道狭窄から生じる喘鳴や呼吸困難,そして開口制限といった重篤な症状を確認する必要がある.さらに治療が遅れ病状が進行すると,敗血症,DIC,多臓器不全などに発展する場合がある.バイタルサインの確認は必須である.重篤化する原因となる糖尿病や免疫不全に関連する基礎疾患の有無を聴取する.
・内視鏡検査:気道狭窄の把握のため,咽喉頭の観察を行う.口腔内も含め,先行感染が疑われる炎症所見がないか確認する.
・血液検査:炎症の程度の評価のため白血球数,白血球分画,CRP,プロカルシトニン,凝固線溶系を調べる.
・造影CT:膿瘍の進展範囲,縦隔への進展,気道閉塞の程度を確認する.膿瘍腔は低吸収域で,周囲に造影効果を認める.降下性縦隔炎への進展の有無について確認が必要である.前額断CTを併用すると膿瘍の進展経路の把握に役立つ.
・超音波検査:膿瘍形成の有無,局在を判断するために有用であり,膿瘍は低エコー像として