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治療

耳鳴
tinnitus
山田浩之
(神奈川県警友会けいゆう病院・耳鼻咽喉科部長)

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GL耳鳴診療ガイドライン2019年版

治療のポイント

・耳鳴治療の基本は患者に耳鳴について丁寧に説明し,正しく理解してもらうことである.

・重症耳鳴は不眠,不安障害,抑うつを引き起こすため注意が必要である.

・耳鳴を消失・減弱させる薬剤は存在せず,薬物療法の中心は耳鳴に伴う苦痛を軽減することにある.

◆病態と診断

・耳鳴は拍動性耳鳴と非拍動性耳鳴に分類される.拍動性耳鳴は全体の15%程度で,血管系の疾患に伴うことが多く,聴診器やオトスコープで聴取されることがある.

・拍動性耳鳴の原因として動静脈瘻や奇形,頸動脈狭窄,グロムス腫瘍,頸動脈(椎骨動脈)解離などが挙げられ,緊急性のある疾患も含まれる.

・非拍動性耳鳴の多くは難聴に伴うものである.聴覚伝導路(中枢へ音信号が伝わる経路)において蝸牛障害により求心性信号が途絶えると,中枢聴覚路の抑制系の活動が低下し,過剰興奮が生じることが耳鳴の発生に関与していると考えられている.

・急性発症の場合,突発性難聴の可能性があり,早急に診断をつける必要がある.

・慢性の非拍動性耳鳴の原因は加齢性難聴が最も多く,60歳を過ぎると3人に1人が耳鳴を自覚している.

・いずれの耳鳴も患者の意思にかかわらず持続するため,不安や焦燥,緊張などのネガティブな情動反応が加わるとさまざまな苦痛を引き起こし,耳鳴は重症化する.

◆治療方針

 拍動性耳鳴や急性発症の非拍動性耳鳴は原因疾患の治療により治癒が期待できる.非拍動性の慢性持続性耳鳴では,軽症の場合,最も多い訴えは「何か重大な病気が隠れているのではないか?」といった病気の心配であり,医師の丁寧な説明により耳鳴の病態を理解するだけで苦痛が軽減し,特別な治療を要さないことも多い.また,難聴の自覚がなく,「耳鳴のために聞こえない」と考えている患者も,検査を行うと聴力が低下していることが多い.

 重症の場合,不眠や不安,抑うつ

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