診療支援
治療

嚥下障害
dysphagia
二藤隆春
(国立国際医療研究センター病院・耳鼻咽喉科・頭頸部外科診療科長(東京))

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GL嚥下障害診療ガイドライン2018年版

治療のポイント

・経口摂取の可否を判断するうえで,嚥下機能のみならず,精神・身体機能の評価も重要である.

・脳卒中などによる急性発症例では,早期から口腔ケアや食物を用いない訓練を開始する.

・経口摂取の開始時は,一般的に誤嚥しにくいゼリーやペースト食を選択する.

・経口摂取の開始後は,患者の摂食する様子を観察し,肺炎徴候の有無を確認する.

・誤嚥していてもむせない場合があることに留意し,嚥下後に咳払いをさせたり,湿性嗄声を確認する.

◆病態と診断

A病態

・嚥下とは食物を口腔から胃まで移送する一連の動作であり,随意運動による口腔期,反射運動による咽頭期,蠕動運動による食道期の3期に分類されている.

・咽頭期は脳幹部の嚥下中枢でプログラムされた強固なパターン運動により遂行されている.

・嚥下の過程に機能的または器質的障害が存在し,食物の適切な移送が妨げられている状態が嚥下障害であり,脳血管障害,神経筋疾患,頭頸部癌などさまざまな疾患のほか,加齢変化や全身衰弱などによっても生じる.

・食物が気道に流入することは誤嚥とよばれ,肺炎や窒息の原因となる.

B診断

・問診ではむせや飲み込みにくさなどの自覚症状のみならず,肺炎徴候,既往歴,内服薬なども聴取する.外来患者では症状を自覚していない場合も多い.

・精神・身体機能の評価を行うとともに,口腔や咽頭,喉頭を診察する.喉頭の診察が困難な場合は発声させて,声門閉鎖不全による気息性嗄声や唾液誤嚥を示唆する湿性嗄声の有無を確認する.

・簡易検査(スクリーニング検査)として,反復唾液嚥下テスト,水飲みテスト,食物テストなどが利用されている.

・精査が必要ならば,X線透視下で嚥下関連器官の運動と造影剤の動態を評価する嚥下造影検査(VF:videofluorography)や,軟性喉頭内視鏡を咽頭腔に留置した状態で食物を嚥下

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