診療支援
治療

癌患者のケア
end of life care in cancer
井口真紀子
(祐ホームクリニック大崎・院長(東京))

GL終末期がん患者の輸液療法に関するガイドライン(2013年版)

Ⅰ.がん悪液質

治療のポイント

・がん悪液質は,体重減少がみられはじめた段階から早期の多角的介入が重要である.

・薬剤療法単独ではなく,全人的苦痛に対して栄養療法や運動療法も併用しつつチームでかかわる.

◆病態と診断

・悪液質(cachexia)は,もともと慢性消耗性疾患の終末像としての栄養不足による衰弱を表す単語として用いられてきた.がん患者の多くが病状の進行とともに食思不振や体重減少を経験する.

・がん悪液質の標準的な定義である2011年のEPCRC(European Palliative Care Research Collaborative)の提言では「(脂肪組織の減少の有無にかかわらず)骨格筋量の持続的な減少を特徴とする多因子症候群で,従来の栄養サポートで改善することは困難な進行性の機能障害をもたらす.病態生理学的には,種々の程度の経口摂取量の減少と代謝異常による負の蛋白,エネルギーバランスを特徴とする」と定義される.がん悪液質は患者の活動性を低下させ,QOLを悪化させる.さらに「食」に対する思いは多様であることから,食べられないことは食関連苦悩(ERD:eating-related distress)とよばれる特有の苦悩を生じさせる.

・がん悪液質は,前悪液質,悪液質,不応性悪液質の3つのステージに分類される().悪液質という言葉でイメージされるのは不応性悪液質だが,がん悪液質については体重減少がみられはじめた段階(前悪液質/悪液質)からの早期の多角的な介入が効果的である.

・がん患者の体重減少はがん悪液質だけでなく,治療可能な飢餓も原因となりうる.がん悪液質と飢餓とどちらが主たる病態かは患者によるが,栄養状態に影響を与える諸症状(NIS:nutrition impact symptoms)として,呼吸困難や早期

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