GLがん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2020年版)
治療のポイント
・がん疼痛が悪化している,もしくは内服が困難な状態の悪性腫瘍患者に対して,在宅医療でも医療用麻薬の持続注射による疼痛緩和が可能である.
・内服が困難な場合,ほかにフェンタニル貼付薬という選択肢があるが,疼痛が悪化していくときはレスキュー投与がうまく使えないので,持続注射を選択すべきである.
・PCAポンプを用いることで,医療者が不在のときにも疼痛時のレスキュー投与を使用できる.
◆治療方針
末期の悪性腫瘍患者において,持続的疼痛があり鎮痛薬の経口投与では疼痛が改善しないときは注射剤を用いる.この場合の鎮痛薬としては,ブプレノルフィン,モルヒネ,フェンタニル,オキシコドン,ヒドロモルフォンを携帯型ディスポーザブル注入ポンプ,または輸液ポンプを用いて注入する.このポンプには,薬液が取り出せない構造であること,患者などが注入速度を変えられないことが求められる.
末期の悪性腫瘍患者における疼痛の経過はさまざまであり,末期に至る以前から医療用麻薬を要する患者もいれば,末期の状態になってから疼痛が出現する患者もいる.特に内服が困難な状況になったとき,安易な手段としてフェンタニル貼付薬が選択されることもあるが,疼痛が悪化傾向のときにすみやかな調整が難しいこと,レスキュー投与が坐薬などしかないことから,患者の苦痛を最大限緩和するためにも,必要な際は躊躇なく医療用麻薬の持続注射を選択すべきである.ポンプは管理料の範疇において,薬局や医療機器メーカーからレンタルすることもできる.
がん疼痛の治療の全般については,本書の別項に加えて,日本緩和医療学会の「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2020年版)」も参照されたい.
A注射で医療用麻薬を初めて開始するとき
1.持続注射
Px処方例 下記のいずれかを用いる.すべて持続皮下注射を選