診療支援
診断

監修にあたって

 私も監修者としてそれなりに手を入れさせてはもらったとはいえ,本書は卒後12年そこそこの新進気鋭の若手,上田剛士医師による単独著である.私と上田君とは,彼が卒後3年間を救急で知られた名古屋掖済会病院で過ごした後,2005年に当時私の勤務していた国立京都病院総合内科に後期研修医として赴任して以来の付き合いである.上田君は当時から卒後4年目とは思えない力量を発揮していたが,翌年,私と時期をほぼ同じくしてともに現在の洛和会音羽病院に移り,総合診療科の若きリーダーの1人として,診療にまた初期・後期研修医の臨床教育に遺憾なく力を発揮してくれた.彼の研修医向けレクチャーは,その内容の新しさと「数字=定量的エビデンス」で常に好評を博していた.現在は系列の姉妹病院である洛和会丸太町病院で救急・総合診療科のリーダーとして多忙な診療の傍ら,若手医師の教育にいそしんでいる.

 本書は彼が研修医時代,もしかしたら医学生時代から収集してきた医学情報をEBM-Noteと称してまとめてきた膨大なファイルを基に書き起こしたものである.1990年代に幕を開けたIT時代の真っ只中で育ち,コンピューターリテラシーに長けた彼の世代の医師たちの中には,文献はすべてPDF化してコンピューターに入れ,簡単に検索して取り出せるようにしている人が多い.われわれ熟年世代であれば,紙コピーを取ってラインマーカーで線を引きながら読んだものをビニールファイルに入れ,ぎゅうぎゅうの本棚に押し込んでいたところを,である.上田君の偉いところは,ただコピーを保管するだけでなく,できるだけ定量的なエビデンスを重視しつつ,各トピックについて自分なりにコンパクトにまとめ直したファイルをこつこつと作成してきたことにある.それが集大成されて今回の書籍となったわけである.

 IT時代が幕を開けるまで,われわれ中年以上の世代は研修医時代,何か調べものをした

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