頸静脈の観察
●45°座位で右内頸静脈を観察し,二相性で拍動を触知しない波形の上端を同定する.
●頸静脈圧が胸骨Louis角から4.5cmH2O以上あれば頸静脈圧上昇と考える.
●そのままでは内頸静脈を同定できないが,腹部圧迫や頸静脈の近位部圧迫にて初めて頸静脈が確認できる場合は頸静脈虚脱と考える.
●重症三尖弁閉鎖不全ではcv wave(c波とv波が癒合したもので,心室収縮期にa波よりも大きい拍動を認める)が出現し,心房細動ではa波が消失する.
●解剖学的特徴から,右内頸静脈は左内頸静脈や外頸静脈と比較すると心房の拍動と圧が障害なく伝えられるため観察に優れている.
●接線方向からライトを照らしたり,付箋を貼ると拍動が観察しやすい〔N Engl J Med. 2004 Sep 23; 351(13): 1364〕.
●頸静脈圧波形と頸動脈圧波形の違い
▶頸静脈圧波形は陽性波3つと陰性波3つからなり,これらの変化から種々の異常が推測される.
□a波:右心房の収縮によって起こる一番高い陽性波.
・x谷:心房の弛緩を反映する第1の小さな陰性波.
□c波:心室の等容性収縮期における三尖弁の右心房への突出による第2の小さな陽性波.
・x’(xプライム)descent:続いて起こる右心房の弛緩による大きな陰性波.
□v波:三尖弁の閉鎖に続く右心房の充満による第3の陽性波.
・y波:続いて三尖弁が開き,右心房が虚脱することによる大きな陰性波.
●頸静脈圧の判断
▶中心静脈圧CVP(cmH2O)は頸静脈圧+4.5で推定され,頸静脈圧が4.5cmH2Oまでが正常とされるが,正常値は3cmH2O以下という意見もあり〔Am Heart J. 1998 Jul; 136(1): 10-8〕,精密な評価はあまり意義がない.
▶頸静脈が怒張している場合の肺動脈楔入圧PCWP>18mmHgの予測
▶頸静脈が虚脱しているときは近位部