【外傷に続発する皮膚疾患とは】外傷の種類は外科学総論によると感染創(汚染創),非感染創に分けられる.また外傷に続発する各種病原体による急性・慢性感染症がある.汚染創では,特に土壌中の細菌や真菌の感染が問題となる.多くは弱毒菌であるが,創部より侵入し感染する.埋伏したガラス,木片などの異物による膿瘍や異物に対する反応性の肉芽腫なども起こりうる.また,創治癒後のケロイドや瘢痕状に生じるサルコイドーシス(瘢痕浸潤型)も知られている.いずれも顔面,手,足の露出部位に多い.消毒薬や外用薬による接触皮膚炎,縫合糸膿瘍のほか,近年では美容外科手術で挿入,注入される異物による皮膚潰瘍などもあり,患者は美容外科的施術の既往を秘匿することも多いため,診断が遅れることがある.
【外傷に続発する皮疹をみたら】まずは異物を疑う.受傷の状況を詳細に問診し,臨床所見から,創内に異物が存在するかどうかを評価し,縫合が必要か,デブリードマンが必要かの判断を行う.汚染外傷では抗破傷風ヒト免疫グロブリンや破傷風トキソイドなどの破傷風対策が必要である.汚染皮膚外傷の急性感染症では,壊死性筋膜炎やガス壊疽の死亡率が高く問題となる.動物咬傷ではイヌやネコの口腔内常在菌であるPasteurella属によるパスツレラ感染症を考慮すべきであろう.一方,小さい切り傷やとげを刺すなどの傷が,慢性に経過して治らない,セフェム系抗菌薬が効かない,痛みも少ない場合には,スポロトリコーシス,クロモミコーシスをはじめとする真菌症やMycobacterium marinumをはじめとする非結核性抗酸菌感染症などの一般細菌以外の感染症を考えるべきである.すなわち,異物の存在の有無をチェックすることと一般細菌以外の感染症を考えるべきということがポイントである.さらに,基礎疾患の把握も重要である.プレドニゾロンや免疫抑制薬の内服治療中や抗癌剤を投
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