診療支援
治療

下腿に潰瘍を生じる疾患
Diseases manifesting leg ulcer
壽 順久
(大阪大学講師)

【下腿潰瘍とは】下腿に生じる皮膚潰瘍を総称して下腿潰瘍という.下腿潰瘍は種々の原因によって起こり,ただ漫然と皮膚潰瘍の治療を行うのではなく,表題のごとく,原因疾患を明らかにして病態に基づいた治療を行う必要がある.下腿潰瘍の多くは循環障害によるもので,静脈性が70%以上と最も多いが,動脈性やその両者の合併,血管炎,膠原病,褥瘡,悪性腫瘍,感染症,接触皮膚炎なども原因となり,その鑑別が重要となる.

【下腿潰瘍をみたら】以下の順序で鑑別を進める.①診察(視診・問診・触診):皮膚科医として最も重要である.診察により,鑑別する疾患を頭で列挙し,以降の行う検査の選択が決まる.視診では,潰瘍の部位,大きさ,形,深さ,肉芽の性状,潰瘍周囲の皮膚の状態(発赤,脂肪硬化,色素沈着,リベドの有無など),静脈瘤の有無などを確認する.②組織検査(皮膚生検):積極的に皮膚生検を行い,組織学的検討を行う.生検は潰瘍部のみを採取するのではなく,周囲の正常皮膚を含めて採取する.生検により潰瘍の拡大が生じる可能性があり,患者には検査の必要性を十分に説明する.下腿潰瘍の生検部は,創傷治癒が悪いことが多く,抜糸までの期間を少し長めにとる.③培養検査(スワブ・組織):スワブ培養,組織培養検査(一般細菌,真菌,抗酸菌)も提出する.④血液検査(末血,生化学,凝固系,自己抗体,免疫学的検査など):一般的な末血,生化学的検査のほかに,血栓性疾患の鑑別,膠原病・血管炎の鑑別のため,IgG,IgA,IgM,Protein C,S,アンチトロンビンⅢ,抗カルジオリピン抗体,β2GP1抗体,クリオグロブリン,各種自己抗体(強皮症・皮膚筋炎・全身性エリテマトーデス・関節リウマチなど),C-ANCA,P-ANCAといった検査を行う.ただし,漫然と検査オーダーするのではなく,もしくは,の結果を踏まえて,必要に応じた検査を行う.⑤画

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