診療支援
治療

全身の水疱を主徴とする疾患
Diseases manifesting generalized blisters
山上 淳
(東京女子医科大学准教授)

【水疱とは】いわゆる「水ぶくれ」.透明な水様性の内容をもち,天蓋に被膜をもつ皮膚隆起と定義される.水疱の内容は主に血漿成分と細胞成分からなる.放置された水疱の内容がゲル状に変化してくるのは,血漿成分のフィブリンを多く含むためと考えられる.細胞成分は主に表皮角化細胞と血液細胞からなり,特に赤血球を含んで赤色を呈した水疱を血疱とよぶ.疱膜が緊張しているものは緊満性水疱,たるんでいるものは弛緩性水疱とよばれ,主に水疱が形成される深さによって性状が決まる.緊満性水疱は,表皮下に水疱が生じるため疱膜が厚くなり,内圧が高くなって膨らんだ状態となる.弛緩性水疱は,表皮内または角層下に水疱が生じるため疱膜が薄く,容易に破れてびらんとなる.直径5mm以下の水疱を,小水疱と表現することもある.

【水疱をみたら】水疱を生じる要因はさまざまであるが,全身性に多数の水疱がみられるという状況は,それほど頻繁にみられるわけではない.見逃してはならないのは以下の疾患で,いずれも早期の診断がきわめて重要であり,専門性の高い診療が必要とされる場合が多い(表1-40)①自己免疫性:自己免疫性水疱症は,自己抗体により皮膚および粘膜に水疱を生じる一連の疾患群で,表皮内に水疱を生じる天疱瘡群と,表皮下に水疱を生じる類天疱瘡群に大別される.症状から自己免疫性水疱症が疑われた場合には,生検を行って皮膚または粘膜に自己抗体が結合していることを証明することが重要である.日本で最も頻度の高い自己免疫性水疱症は,水疱性類天疱瘡である.全身に多発する緊満性水疱と浮腫性紅斑が典型的な臨床症状で,症例の大半は60歳以上の高齢者である.類天疱瘡群には,水疱性類天疱瘡のほかに粘膜症状が主体となる粘膜類天疱瘡,水疱の生じる位置がやや深いため上皮化後に稗粒腫がみられる後天性表皮水疱症,IgAが皮膚基底膜部に結合することによって起こる線状Ig

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