診療支援
治療

びらんを主徴とする疾患
Diseases manifesting erosion
鶴田 大輔
(大阪市立大学教授)

【びらんとは】表皮基底層に及ぶ表皮の剝離・欠損である.紅色湿潤性である.治癒後に瘢痕を残さないが色素沈着を起こすことはある.水疱や膿疱が破れたあとや,擦過,搔破,熱傷などにより生じる.口唇,口腔粘膜は角質を欠くためにびらんを生じやすい.

【びらんをみたら】びらんの原因が水疱や膿疱が破れたのか,擦過や搔破により2次的に生じたのか鑑別が必要となる.また,皮膚瘙痒症(皮膚感覚異常症),アトピー性皮膚炎では瘙痒が強く,搔破によりびらんが生じる.

1.水疱や膿疱以外の原因

①物理的障害:外傷,熱傷,褥瘡などが挙げられる.外傷には切創,裂傷,割創,擦過傷,挫滅傷などが挙げられるが,このなかでは擦過傷によりびらんが生じる.通常は擦過したかどうか経過からわかるため,鑑別には苦労しないはずである.熱傷では真皮浅層熱傷(SDB)でびらんを形成する.これも経過からわかるはずである.褥瘡では軽微なものでびらんを生じる.医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)にてもびらんは生じることに注意が必要である.褥瘡,MDRPUともに好発部位から鑑別は比較的容易であると考えられる.②感染症:伝染性膿痂疹,単純疱疹,帯状疱疹などが挙げられる.重症疾患としてはブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)に注意を要する.伝染性膿痂疹は主に幼児,小児にみられる.黄色ブドウ球菌の産生する表皮剝脱毒により顆粒層レベルで水疱・びらんを生じる.単純疱疹は口唇,口囲,外陰部に疼痛を伴う小水疱が集簇してみられる.小水疱が破れたあとにびらん,痂皮を形成し,繰り返す特徴がある.帯状疱疹は神経走行に沿って片側性に小水疱が集簇する.単純疱疹と同様に,小水疱が破れたあとにびらん・痂皮を形成する.SSSSは早期発見し抗菌薬点滴治療などの全身療法を行わないと予後が悪い.③炎症性皮膚疾患:瘙痒を伴う皮膚疾患で,搔破に伴う2次的なびらんが生じる.瘙痒を伴う皮膚疾

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