診療支援
治療

フローサイトメトリー
Flow cytometry
島内 隆寿
(浜松医科大学病院准教授)

【概説】フローサイトメトリーは細胞表面あるいは細胞内に発現する蛋白を蛍光抗体で標識して解析することにより,目的とする細胞集団を同定する免疫学的技法である.目的細胞の頻度から造血器悪性腫瘍細胞の診断に至るまで,免疫学的評価においては欠かせない検査法といえる.皮膚科の日常診療においても,末梢血のみならず,病変部皮膚あるいはリンパ節を用いることで,細胞性免疫能評価から皮膚リンパ腫をはじめとする造血器悪性腫瘍の診断まで,幅広く応用されている.本項では代表的な皮膚リンパ腫に対するフローサイトメトリーの活用について解説する.


検査の進め方

 皮膚科診療において,原発性皮膚悪性リンパ腫や皮膚外原発の造血器悪性腫瘍の皮膚浸潤が疑われた場合,末梢血のみならず,摘出した皮膚組織,リンパ節を検査会社による外注検査へ提出する.解析対象疾患によって,白血病・リンパ腫解析用,悪性リンパ腫解析用,多発性骨髄腫解析用などがあり,用いる抗体の組み合わせが異なる.前2者はCD45の発現が低下した腫瘍細胞を選択し(CD45ゲーティング),各表面マーカーの発現強度を解析することができる.ある程度の検体量が必要であることや,腫瘍細胞のCD45の発現が低下していない場合,解析結果の解釈に注意が必要となる.また,多数の抗体を用いたマルチ解析とはなっているが,あくまで悪性リンパ腫全般を対象としたスクリーニング解析であるため,皮膚リンパ腫に特化した解析とはならない.したがって,検体提出の際は,同一検体を病理組織,免疫組織化学染色,分子生物学的検索に提出し,多角的に評価する必要がある.

1.Sézary症候群・菌状息肉症

①Sézary症候群:末梢血中のCD4陽性の異型リンパ球において,CD7,CD26の発現欠損を認める.フローサイトメトリーによる細胞表面マーカー解析において,末梢血CD4/8比(10以上)の異常増加がtwo-col

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