診療支援
治療

抗菌外用薬
Topical antimicrobial agents
林 伸和
(虎の門病院部長)

【概説】皮膚感染症に対する抗菌外用薬は,高濃度の抗菌薬を外用することで皮膚に局在する細菌に直接作用し,除菌する目的で使用する.皮膚の一般的な感染症では,黄色ブドウ球菌や溶血性レンサ球菌が関与している場合が多く,これらに感受性のある薬剤を用いる.蜂窩織炎や膿瘍などの深在性細菌感染症では,外用薬では感染部位に薬剤が到達しないため,点滴あるいは内服による全身療法を行う.一方,抗菌外用薬は,局所に高濃度の薬剤を供給でき,全身性の副作用の懸念が少ない点で,表在性皮膚感染症の治療に有用である.痤瘡は一般的な皮膚の感染症とは異なる扱いとなっている.対象となる細菌は痤瘡桿菌〔Cutibacterium acnes(旧称Propionibacterium acnes)〕であり,抗菌薬の選択においてもC. acnesに対する感受性が問題となる.また,痤瘡では面皰形成性がない基剤が選ばれていて,抗炎症効果のあるものもある.


Ⅰ 皮膚の感染症に対する抗菌外用薬

【薬剤】皮膚科領域で使用される抗菌外用薬は,医薬品医療機器総合機構のウェブサイト(2021年8月時点)によると表3-4の通りである.

【適応】抗菌外用薬は,表在性皮膚感染症や深在性皮膚感染症,慢性膿皮症などの適応を有している(表3-4).これらの適応病名は,病名の整理を目的の1つとして行われた抗菌薬再評価の際に作られたもので,表在性皮膚感染症には伝染性膿痂疹,膿痂疹,毛包炎などが,深在性皮膚感染症には癤,癤腫症,癰,化膿性爪囲炎,丹毒,蜂窩織炎など,慢性膿皮症には化膿性汗腺炎,感染性粉瘤,集簇性痤瘡,皮下膿瘍などが含まれる.

【注意点】世界的に薬剤耐性菌の増加が問題となっている.薬剤耐性菌を誘導しないために,漫然とした抗菌薬の使用を避け,感受性のある薬剤を必要な時期に必要な期間に限定して適切に使用することが肝要である.


Ⅱ 痤瘡に対する抗菌外

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