診療支援
治療

レチノイドとPDE4阻害薬
Retinoids and PDE4 inhibitors
藤田 英樹
(日本大学准教授)

Ⅰ レチノイド

【概説】レチノイドとは天然型ビタミンAおよびその誘導体の総称である.本邦ではチガソンが内服薬として主に角化性皮膚疾患に使用されている.チガソンは脂溶性で脂肪に蓄積されるため,半減期が100日以上と長い.レチノイドの作用機序は核内のレチノイド受容体を介した転写調節による.例えば乾癬では,レチノイドが表皮角化細胞に働くと,角化細胞の正常な分化を誘導するとともに異常な増殖を抑制すると考えられている.乾癬に使用する場合は病型によって効果が異なり,特に膿疱性乾癬や乾癬性紅皮症で効果が高い.

【適応】乾癬や掌蹠膿疱症をはじめとして,さまざまな角化性疾患の治療に用いられる.保険適用があるのは乾癬群(尋常性乾癬,膿疱性乾癬,乾癬性紅皮症,関節症性乾癬),魚鱗癬群(尋常性魚鱗癬,水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症,非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症),掌蹠角化症,Darier病,掌蹠膿疱症,毛孔性紅色粃糠疹および紅斑性角化症,口腔白板症,口腔乳頭腫および口腔扁平苔癬である.

【使用方法】①チガソン1回20mgまたは25mg,1日2回程度で開始し,その後症状に応じて減量し,1回10mg,1日1回または2回程度を維持量とする,②チガソン1回10mg,1日1~2回程度の低用量で開始し,徐々に体内に飽和させる,という大きく2つの方法がある.高用量では後述の口唇炎などの副作用が生じ,患者がドロップアウトしやすいため,効果を急がないのであれば後者の方法が無難である.

【副作用】レチノイドの副作用の多くは可逆性かつ用量依存性である.重大な副作用は催奇形性であり,女性は内服開始から中止後2年まで,男性は中止後6か月まで避妊を要する.皮膚・粘膜の副作用が非常に多く,口唇炎・口腔内乾燥・結膜炎・手足の落屑・皮膚の菲薄化・爪囲炎・脱毛などがある.肝機能異常や高脂血症などのチェックのため定期的な採血が必要である.小児に使

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