病態
おむつ皮膚炎とは,おむつを着用している皮膚に起こる炎症で,刺激性接触皮膚炎の一種である.接触皮膚炎(いわゆる「かぶれ」)は,皮膚科の外来診療において最もよく目にする疾患の1つであり,大きく2つに分けられる.抗原非特異的な反応で起こるものが刺激性接触皮膚炎であり,抗原となる原因物質の曝露により発症するものがアレルギー性接触皮膚炎である(→,「アレルギー性接触皮膚炎」の項参照).刺激性接触皮膚炎が,接触皮膚炎全体のなかで,80%を占めるという報告もある.アレルギー性接触皮膚炎の病態は比較的よく解明されているが,刺激性接触皮膚炎に関しては不明な点も多い.
刺激性接触皮膚炎では,角層が損傷しバリア破壊が起こり,刺激物質が表皮内に入り込む.表皮ケラチノサイトから「危険シグナル」とよばれる炎症性メディエーターやケモカインなどが放出される.炎症性メディエーターやケモカインとしては,TNF-α,IL-1α,GM-CSFなどが考えられる.その後,これら炎症性メディエーターやケモカインにより,表皮や真皮に存在する細胞(例えば樹状細胞など)から炎症性細胞を浸潤させるようなサイトカイン,例えばIL-8などが放出され,真皮や表皮に好中球をはじめとする炎症細胞浸潤が起こり,皮膚炎が生じると考えられている.
【病因】原因の多くは,「尿・便の刺激」と「蒸れ」である.便(下痢便)中に含まれる消化酵素や尿が長時間皮膚に付着しアルカリ性に傾くことで,皮膚バリア機能障害をきたす.さらに,尿や汗などの水分により高温多湿な状況になると,皮膚が浸軟し皮膚バリア機能障害をきたし,刺激を受けやすい状態となる.また,紙おむつでは,化学繊維・ゴム・吸水性薬剤などのおむつの素材そのものが刺激となり炎症を引き起こす.
【臨床症状】乳幼児や高齢者のおむつの使用者に起こる.おむつを着用している部位に一致して,紅斑,丘疹,鱗屑を認め,
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