診療支援
治療

Vidal苔癬
Lichen simplex chronicus Vidal
足立 厚子
(兵庫県立加古川医療センター地域医療連携部長兼皮膚科部長)

病態

 Vidalは,苔癬性の局面病変をもち,湿潤傾向を示さない慢性瘙痒性の病変を独立の皮膚疾患とみなし慢性単純性苔癬(lichen simplex chronicus)として1886年に報告したが,その後これはVidal自身により湿疹の1亜型であると定義された.その後Vidalの門下生のBrocqらは,神経性因子がその発症原因の第一義的なものであるとして限局性慢性神経皮膚炎(neurodermatitis chronica circumscripta)という名称を報告した.しかし,現在では独立疾患というより,種々の原因で生じる慢性の湿疹・皮膚炎の1型と考えられている.臨床的にはまず瘙痒が先行し,搔破を繰り返すうちに丘疹を生じ,さらに機械的刺激が加わったあと,それらが融合して生じる境界明瞭な苔癬化局面病変である.病変部は乾燥し,湿潤傾向を示さない.

【病理組織学的所見】表皮細胞の肥厚と真皮の非特異的炎症性細胞浸潤が主体で,時に海綿状態を伴うが,水疱形成には至らない.

【病因】いまだ不明である.末梢神経病変説,心因説,アレルギー説などが唱えられたが,現在では何らかの刺激による瘙痒感に対する繰り返しの搔破,摩擦が原因と考えられている.項部への毛髪,硬い繊維の衣服,アクセサリーなどの刺激,外陰部への分泌物による刺激,下着が摩擦する部位への刺激,下腿への靴下の刺激など,比較的弱い刺激が持続的に加わり,誘発している場合が多い.アトピー性皮膚炎,接触皮膚炎,皮脂欠乏性湿疹などが基礎疾患になることが多く,糖尿病,長期透析患者などの皮膚瘙痒症に続発することも多い.

【臨床症状】好発部位は項部および頸部であり,特に中年女性ではこれらの部位に生じるものが圧倒的で,ほかに前腕,肘,大腿,下腿 仙骨部,外陰部,陰囊などにも認められる.通常,長軸が5~15cmの楕円形局面で単発のことが多く,苔癬化局面で,全

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