うっ滞性皮膚炎 | 医学書院_医療情報サービス

病態

　うっ滞性皮膚炎は，下腿中央より末梢側にみられる静脈性循環障害による病的状態で，静脈瘤あるいは静脈血流のうっ血や毛細血管の障害による真皮浮腫，炎症性変化をみるものを指す．広義には下肢の浮腫，ヘモジデリン沈着，湿疹病変，時に皮膚硬化性病変までを包括する．慢性静脈不全により皮膚の浮腫から潰瘍に至る変化をみるものとして，うっ滞性症候群や，静脈瘤性症候群という名称も使われる．

　下肢の静脈には，皮下を走る表在静脈と筋層内を走る深部静脈があり，その間を連絡する穿通枝がある．静脈壁は薄く，弾力性に乏しい．弁の働きにより血流を末梢から中枢へ，表在から深部へ還流させている．深部静脈では歩行時の筋の収縮と弛緩を利用し，弁の効果を発揮させて，重力に逆らって還流させている．

　静脈壁の先天性脆弱，深部静脈の狭窄閉塞，先天性・後天性動静脈瘤，静脈弁機能不全などが静脈血行不全，静脈瘤の原因になる．さらに，肥満，加齢，妊娠，立位作業，外傷，炎症，ホルモンの影響，便秘などが誘因となる．静脈血行不全があると，皮膚の毛細血管やリンパ管の拡張と，脈管周囲の蛋白質の漏出が起こり，フィブリンの沈着や線維化が生じる．その結果毛細血管からの酸素や栄養の拡散が障害され，組織は虚血状態になる．皮膚全層の炎症が慢性に持続し，表面の発赤，色素沈着，真皮の硬化，脂肪組織の線維化や萎縮が生じる．搔破により皮膚に外傷を受ければ，難治性のびらんや潰瘍となる．下肢のだるさやこむら返りを訴えることも多い．

【臨床症状】(図4-14)図慢性静脈血行不全による皮膚変化は下腿下1/3内側に好発する．初期症状である浮腫は立位や歩行などで誘発され，夕方以降に増悪することが多く，就寝にて軽快する．踝周囲に始まり，足全体にも及ぶことが多い．浮腫が持続するとその部位の皮膚は光沢を帯び，青みがかった紅色から褐色斑を呈するようになり，瘙痒がみられ，搔破による