診療支援
治療

輸血後GVHD
Post-transfusion graft-versus-host disease
野村 尚史
(京都大学大学院難病創薬産学共同研究講座特定准教授)

病態

 輸血後移植片対宿主病(GVHD)は輸血後に発症する致死的合併症である.輸血血液中のリンパ球が宿主の皮膚,消化管,骨髄を攻撃することで発症する.有効な治療法はなく,予防が唯一の対策である.

【頻度】1981~1986年におけるわが国の発症率は0.15%だった.放射線照射輸血による本症の発症例は,2000年以降わが国では報告されていない.2009年2月,厚生労働省「輸血療法の実施に関する指針」を改定し,2010年1月に日本輸血・細胞治療学会輸血後GVHD対策小委員会は,すべての輸血に放射線照射すべきとして「輸血後GVHD予防のための血液に対する放射線照射ガイドラインV」を公表した.

【臨床症状】輸血後1~2週ほどで,発熱,紅斑が出現する.続いて肝機能障害,下痢,下血などの消化器症状が出現する.さらに汎血球減少,骨髄無形成をきたし,敗血症や多臓器不全で死亡する(図4-22)典型的症状は,発疹(80%),発熱(68%),トランスアミナーゼ上昇(66%),汎血球減少(65%),下痢(43%),骨髄無形成(40%),肝腫大(14%)である.紅斑・紅斑丘疹で始まり,紅皮症化する.しばしば発疹が初発症状となる.海外では不十分な放射線照射による,非致死的な軽症の輸血後GVHDが報告されている.


診断

 輸血後の臨床症状,一般血液検査により疑う.血液センターに協力を求め,末梢血リンパ球のキメラ状態(HLA多型・マイクロサテライト多型)を証明し診断する.

【鑑別診断】再生不良性貧血,重症感染症(ウイルス,細菌,真菌),薬疹,GVHD,血球貪食性リンパ組織球症,原疾患の増悪など.

【必要な検査】皮膚生検(空胞変性,液状変性,異角化,マイクロキメリズム),肝生検.


治療

 有効な治療はない.造血幹細胞移植,免疫抑制薬(グルココルチコイド,シクロスポリン),免疫グロブリン大量静注療法などが試みられる

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