診療支援
治療

特発性の蕁麻疹
Spontaneous urticaria
森田 栄伸
(島根大学名誉教授)

病態

 蕁麻疹の基本的な病態は,皮膚肥満細胞から放出されるヒスタミンなどの化学伝達物質により引き起こされる皮膚の毛細血管の透過性亢進や末梢痒み神経の刺激である.皮膚肥満細胞の活性化機序はさまざまで,抗原特異的IgEを介したアレルギー機序が最もよく解析されているが,薬剤や物理的刺激などが誘因となる場合もある.しかし,患者が特定の誘因を自覚しないにもかかわらず,自発的に肥満細胞の活性化が起きる場合も少なくない.この原因ないし誘因なく自発的に膨疹の出没を繰り返す場合が特発性の蕁麻疹である.このため日本皮膚科学会から公表された「蕁麻疹診療ガイドライン2018」では,蕁麻疹は特発性の蕁麻疹と誘因や原因が特定できる刺激誘発型蕁麻疹に区分され,前者は発症後6週間以内の場合は急性蕁麻疹,発症後6週間以上経過した場合は慢性蕁麻疹と区分されている(表5-1)

【頻度】病型別の頻度をヤフーバリューインサイト登録パネルに対する質問にて調査した結果,回答のあった547,342名のうち19%が蕁麻疹の診断を受けたことがあると回答した.つまり,国民の5人に1人が蕁麻疹を経験していると思われる.さらに,蕁麻疹患者11,313名において診断された病型を尋ねると慢性蕁麻疹が36%と最多で,急性蕁麻疹29%,アレルギー性蕁麻疹15%,コリン性蕁麻疹5%,物理性蕁麻疹9%,血管性浮腫2%,その他の蕁麻疹7%であった.特発性の蕁麻疹が全体の65%を占めている.性別はすべての病型で女性の割合が高く,慢性蕁麻疹で62%,急性蕁麻疹65%,アレルギー性蕁麻疹64%,コリン性蕁麻疹59%,物理性蕁麻疹75%,血管性浮腫75%,その他の蕁麻疹では67%が女性であった.慢性蕁麻疹の罹病期間は,症例により大きな幅があり,数か月~数年にわたるとされている.

【病因・発症機序】特発性の蕁麻疹患者で外的要因がなく自発的に膨疹が出現する

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