病態
血液検査で出血・凝固系に異常がなく,先天性に血管または結合織の異常,または血管支持組織の脆弱化により生じる紫斑である.
【病因・発症機序】全身性と局所性に分類される.前者に代表的なEhlers-Danlos症候群では血管壁成分であるコラーゲンの代謝異常により血管の脆弱化をきたし,ごく普通の行動でも出血斑と血腫を生じる.またコラーゲン合成に必要なビタミンC欠乏による壊血病は有名な疾患であったが,現代ではまれである.うっ血性紫斑は下肢静脈瘤症候群を併発していることが多く,血管内圧亢進によるうっ血が紫斑を生じる基盤となっている.一方,皮膚での血管支持組織の脆弱化によって生じる紫斑にステロイド紫斑,老人性紫斑がある.
【臨床症状】①ステロイド紫斑:長期のステロイド内服にて血管が脆弱化し,軽微な外傷で容易に大小さまざまな斑状の紫斑を形成する.打撲を契機に容易に広範囲の血腫を形成し,しばしば広範囲な難治性潰瘍となり,外科的処置(植皮)が必要な場合も少なくない.②老人性紫斑:高齢者で加齢とともにみられる手背や前腕の萎縮性皮膚が,血管脆弱性のため,机や家具に当たる程度の軽微な外傷でも出現する出血斑.結合織が疎になっているため,拡大しやすく,繰り返しやすい.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】血管炎,血液疾患,異常蛋白による紫斑,特に全身性アミロイドーシス,その他の疾患すべて鑑別する必要がある.
【問診で聞くべきこと】家族歴,既往歴(易出血性の有無),外傷や打撲の既往,血流改善薬・抗凝固療法も確認する.
【必要な検査とその所見】①血液検査では末梢血,出血凝固・線溶系に異常がないことを確認する.グロブリンなどの血液異常蛋白の検査も合わせて実施する.②Ehlers-Danlos症候群ではほかの臨床症状と合わせて病型を特定し,その臨床型に見合った検査と治療を進める.③局所性に生じた紫斑でもほかの疾患との
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