診療支援
治療

毛孔性苔癬
Lichen pilaris,Keratosis pilaris
高橋 健造
(琉球大学教授)

病態

 思春期以降に,肩から上腕伸側や大腿に生じる.毛孔に一致した角化性の小丘疹の多発で,ざらざらした感触から,一般に「さめ肌」や「とり肌」ともよばれる.毛孔性角化症ともいい,毛包上皮の体質的な軽度の角化異常と考えられる.思春期以降の日本人の半数近くに多少の毛孔性苔癬の所見があり,皮膚病というよりは肌質であり,必ずしも治療を要さない.

 肥満者に目立つ傾向があり,アトピー性皮膚炎や尋常性魚鱗癬に合併していることもある.顔面・頰部に同様の皮疹を生じる顔面毛包性紅斑黒皮症(北村)の合併は青年男性例に多くみられる.

【頻度】家族内発症がしばしばみられ,思春期以降の日本人の半数近くに多少の毛孔性苔癬の所見があり,きわめて頻度の高い皮膚症状の1つである.

【病因・発症機序】皮膚病というよりは,遺伝傾向のある毛囊上皮の角化体質である.黒色腫の治療時のBRAF阻害薬により毛孔性苔癬が誘発されることから,毛包上皮におけるRasシグナルの活性化が基礎にあると考えられている.

【臨床症状】思春期以降に目立ち,上腕伸側や肩から上背部,大腿から臀部に,左右対称性のざらざらとした小丘疹が多発する(図8-4).正常皮膚色から淡紅色の小丘疹で,毛囊より突き出た円錐状の硬い角質よりなる.「とり肌」様のざらざらした感触がある.冬季に悪化し肥満者に目立つ傾向があり,自覚症状はほとんどない.


治療

 整容的な訴えより,治療の相談は女性患者が大多数である.決して特殊な皮膚病ではなく,多くの若者に共通した一過性の肌質であり,いずれ軽快することを理解してもらう.日常的なスキンケア,肥厚した角栓を融解させる角質溶解薬の外用や,レーザーによる物理的な表層の剝離,ケミカルピーリングへと段階的に試みる.自費治療となるがレーザー治療よりケミカルピーリングのほうが満足度が高いことも多い.遺伝傾向のある毛包の角化体質であり,抜本的な根治療法は

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