診療支援
治療

汗孔角化症
Porokeratosis
秋山 真志
(名古屋大学教授)

病態

 表皮細胞の異常クローンの増殖が本症の本態と考えられ,病変部の表皮細胞によるp53の過剰発現との関連が示唆されている.病変の辺縁部では,有棘層の細胞の配列の乱れ,個細胞角化がみられ,その上層に不全角化細胞の柱であるcornoid lamellaがみられる.メバロン酸経路の酵素の遺伝的な活性低下によるRAS,lamin Bなどのisoprenylated proteinsの減少による自己炎症が病態に関与していると推察され,その面では,汗孔角化症は自己炎症性角化症の1つと考えられる.汗孔角化症の病変から扁平上皮癌,基底細胞癌が生じることがある.

【頻度】発症頻度は不明である.男女比ではやや男性に多く,発症年齢は幼小児期から老年期までさまざまである.

【病因・発症機序】常染色体性優性遺伝を示す症例も一部にみられる.病因として,メバロン酸経路の酵素をコードする4つの遺伝子(MVDMVKPMVKFDPS)の遺伝子変異,発現低下などが報告されている.発症因子としては,紫外線曝露,外傷,きつい衣類などによる繰り返す摩擦,加齢などが挙げられる.

【臨床症状】辺縁が堤防状に隆起した類円形,楕円形の褐色調の角化性病変が,体幹・四肢に散発する.個疹は褐色調の丘疹として生じ,遠心性に拡大し,慢性に経過する.中央部は萎縮性で若干陥凹している.自覚症状を欠く症例が多いが,瘙痒を伴う例もみられる.個疹の臨床像と分布様式から,古典型(classic porokeratosis of Mibelli),播種状表在性光線性汗孔角化症(disseminated superficial actinic porokeratosis),播種状表在性汗孔角化症(disseminated superficial porokeratosis),線状型(linear porokeratosis)などの病型に分類される

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