病態
妊娠を契機に発症する自己免疫性表皮下水疱症である.血中にBP180に対する自己抗体が検出され,本態は妊婦に生じた水疱性類天疱瘡と考えられている.
【頻度】妊婦のうち約10万人に1人が発症するまれな疾患である.発症は妊娠中期から後期,すなわち妊娠13週以降に発症することが多いが,初期または産褥期に発症する例もある.通常出産後1か月以内に自然に軽快することが多い.
【病因・発症機序】発症機序として明確なものはないが,性ホルモンの関与を示唆した報告もある.類天疱瘡と同様の機序で発症することが推察される.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】pruritic urticarial papules and plaques of pregnancy(PUPPP),妊娠性痒疹,その他の水疱を生じる自己免疫性水疱症(後天性表皮水疱症,線状IgA水疱性皮膚症など).
【臨床症状】強い瘙痒を伴う浮腫性紅斑や滲出性紅斑を認め,小水疱が混じる(図10-7)図.環状紅斑の辺縁上に緊満性水疱が環状配列を呈することがある.口腔内や結膜などの粘膜疹を生じることは少ない.
【必要な検査とその所見】①皮膚生検(下記「病理組織学的検査」に記載)と蛍光抗体法が必須である.さらに抗BP180抗体の測定が望ましい.②蛍光抗体直接法にて表皮基底膜部にIgG,補体成分C3の線状沈着を認める.なかには,IgG沈着の陰性例がある.③蛍光抗体間接法でIgG抗表皮基底膜部抗体を検出する.1M食塩水剝離皮膚を用いた蛍光抗体間接法で表皮側に反応する.④BP180-CLEIA/ELISA法は簡便に抗体価が得られ定量化できるので,診断だけでなく治療効果判定としても有用性が高い.
【病理組織学的検査】類天疱瘡と同様に表皮下水疱を呈する.真皮や水疱内容液中に多数の好酸球浸潤を認めるのが特徴である.
治療
基本的に水疱性類天疱瘡の治療法に準じる.ステロイ
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