病態
手掌および足底における多発性膿疱を特徴とする掌蹠膿疱症は,無菌性膿疱症の代表的な疾患である.
【頻度】本邦における有病率は0.1%程度と推定されており,男女比は1:2と女性に多い.
【病因・発症機序】原因はいまだ不明であるが,病巣感染の関与は古くから指摘されている.このうち扁桃炎では,必ずしも病原菌による感染症ではなく,口腔常在菌のα-streptococcusの関与などが示唆されている.また歯性病巣としては,根尖部に膿瘍,肉芽組織を形成する根尖病巣と中等度以上の歯周炎の2種類がある.これら以外にも病巣感染として副鼻腔炎,中耳炎や胆囊炎などが知られている.扁桃炎や口腔衛生にも影響する喫煙は,掌蹠膿疱症の明らかな悪化因子であるが,これについては本症におけるニコチン性アセチルコリン受容体の発現異常や喫煙者におけるTh17細胞の増加などが報告されている.そのほか,金属アレルギーの関与も以前から指摘されているが,実際にはその頻度は低い.また糖尿病や甲状腺疾患の合併がみられることもある.
診断
【臨床症状】①手掌,足底の先行する紅斑上あるいは単独に小水疱が多発,これらが順次膿疱化し,やがて痂皮化する.本邦で多いのは水疱と膿疱が混在するタイプで,欧米で多いとされる膿疱のみが掌蹠を含む四肢に分布する,いわゆる膿疱性乾癬の四肢限局型は比較的少ない.②ダーモスコピーによる観察も有用で,水疱中央部に小膿疱の形成をみる,いわゆるpustulo-vesicleとよばれる所見は特徴的である.③爪母,爪床に病変が及び爪甲変形をきたす場合もある.また掌蹠外皮疹として,膝蓋から下腿などに落屑性紅斑がみられることもある.④鑑別診断として白癬や異汗性湿疹,好酸球性膿疱性毛包炎などが挙げられる.
【病理組織学的所見】ごく初期にはリンパ球の表皮内浸潤と有棘層の海綿状態がみられるが,次第にこの海綿状態は進展し有棘層内小
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