診療支援
治療

臀部慢性膿皮症
Pyoderma chronica glutealis
黒川 一郎
(明和病院皮膚科部長)

病態

 臀部慢性膿皮症は臀部の化膿性汗腺炎と同じものとみなされている.臀部に有痛性の皮下結節,穿掘性の皮下瘻孔,瘢痕を形成する慢性の炎症を繰り返す難治性疾患である.

【病因】原因は明らかではないが,宿主側の要因によって,毛包の閉塞,囊腫形成などの病変に炎症が加わって起こる再発性の慢性の自己免疫性炎症性疾患である.2次的に細菌感染が起きることもある.遺伝的因子,喫煙,肥満,耐糖能異常などが関連している.


診断

 慢性炎症性再発性の毛包の消耗性皮膚疾患で,思春期後に臀部に疼痛を伴う慢性炎症性病変が生じる.一般に再発性の炎症が臀部に6か月の間に2回以上再燃する結節,瘻孔,瘢痕を形成する.多くは単発性の疼痛を伴う深在性の皮下結節で始まる.皮下結節は増大,多発して,血性の排膿がみられる.皮疹は黒色面皰がかなり高率にみられる.排膿後は皮下瘻孔を形成し,慢性に再発,寛解を繰り返す.隣接する瘻孔は皮下で交通し,穿掘性の皮下瘻孔を形成し,瘻孔の開口部より滲出液,血性膿,粥状物質などを排出し,悪臭を伴う.瘻孔が破裂し,真皮に角層などの異物が流出すると肉芽形成が起こり,肥厚性瘢痕,ケロイドを形成する.重症では蜂窩織炎から敗血症を合併することもある.

【病期分類(重症度)】Hurleyによるstage分類が以前より一般に用いられている.以下のように3期に分類される.①第Ⅰ期:単発,あるいは多発性の皮下膿瘍形成(+),皮下瘻孔(-),瘢痕(-).②第Ⅱ期:再発性の皮下膿瘍,皮下瘻孔(+),瘢痕(+),単発あるいは多発性の隔離された広範な病巣.③第Ⅲ期:広範なびまん性の交通した皮下瘻孔と皮下膿瘍.

【鑑別診断で想起すべき疾患】①癤:毛包性の膿疱がみられ,周囲の発赤,腫脹を伴う.抗菌薬内服で治癒する.②毛巣洞:臀裂部正中に好発し,皮下瘻孔がみられる.

【問診で聞くべきこと】家族歴,喫煙,肥満,糖尿病の有無.

【必要な検

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