診療支援
治療

ムコ多糖症
Mucopolysaccharidosis
玉城 善史郎
(埼玉県立小児医療センター科長兼副部長)

病態

 ムコ多糖症(MPS)はムコ多糖の代謝に関与するライソゾーム酵素の先天的欠損や活性低下により,未分解ムコ多糖が過剰に蓄積・沈着し,臓器の機能障害を引き起こす疾患である.欠損酵素により7つのタイプに大別されている(表14-2)

【頻度】本邦では,おおむね4~5万人に1人程度とされており,特にMPSⅡ型(Hunter症候群)がその半数を占め,以下,MPSⅠ型(Hurler/Scheie症候群)が15%,MPSⅢ型(Sanfilippo症候群)とMPSⅣ型(Morquio症候群)が各々10%程度を占めている.

【臨床症状】病型やその重症度によって症状に差がみられるが,比較的共通してみられる症状として,特異的顔貌(大きな頭,前額の突出,両眼隔離,巨舌,鞍鼻など),精神運動発達遅滞,角膜混濁・網膜変性,骨格障害,肝脾腫,滲出性中耳炎・難聴,閉塞性呼吸障害,心弁膜症などがある.

1.MPSⅠ型

 重症型のHurler症候群は生直後より,特異的顔貌,胸郭変形,肝脾腫,乳児期には精神運動発達遅滞や心弁膜症,角膜混濁,滲出性中耳炎がみられ,症状の進行が速く無治療の場合は10歳代で死亡する場合も多い.軽症型のScheie症候群は発症時期も遅く,病状の進行も緩徐である.学童期以降に上記の多くの症状がみられるが,知的障害はみられない.

2.MPSⅡ型

 Hunter症候群ともよばれ,ムコ多糖症のなかで唯一X連鎖性劣性遺伝の形式をとる.重症型ではⅠ型の重症型に類似するが,骨格障害の出現が遅く,中枢神経症状で気づかれることが多い.また角膜混濁はほとんどみられない.無治療では中枢神経症状や呼吸器症状の進行にて10歳代で死亡するが,近年の治療の進歩により生命予後が改善している.軽症型では,幼児期の関節拘縮をはじめとして,成長障害や心臓弁膜症,網膜変性症,聴力低下などがみられるが,低身長や特異的顔貌を示さない.

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