診療支援
治療

皮膚粘膜ヒアリノーシス
Hyalinosis cutis et mucosa
玉城 善史郎
(埼玉県立小児医療センター科長兼副部長)

病態

 皮膚,粘膜にヒアリン様物質が沈着し,丘疹や疣贅様結節を生じる疾患.

【頻度】非常にまれであり,本邦でも数十例程度の報告のみ.

【病因・発症機序】extracellular matrix protein 1(ECM1)遺伝子変異により,常染色体劣性遺伝の遺伝形式をとる.

【臨床症状】

1.皮膚症状

 顔面の皮膚がびまん性に肥厚し,年齢に比して深い皺襞がみられる.眼瞼縁には光沢のある丘疹が数珠玉状に配列するのが特徴であり,その他,手背や肘,膝,臀部などの機械的刺激を受ける部位に角化性丘疹や結節がみられる.さらに口唇や舌・舌小帯の肥厚などもみられる.

2.全身症状

 喉頭蓋や声帯などに肥厚性病変がみられ,乳幼児期から嗄声がみられることも多い.頭蓋内の石灰化やてんかん,その他全身諸臓器にヒアリンの沈着がみられる.


診断

 下記の臨床症状と病理所見から比較的容易に診断される.

1.臨床的特徴

 眼瞼の特徴的なビーズ状の丘疹を含めた機械的刺激部位の丘疹や結節および嗄声などの症状.

2.病理所見

 真皮に好酸性で無構造均一物質のヒアリン(PASおよびアルシアンブルー陽性,ジアスターゼ抵抗性)がみられ,血管周囲にはタマネギ様に取り囲む.

【鑑別診断で想起すべき疾患】臨床的には全身性アミロイドーシスとの鑑別が必要であるが,病理所見にてダイロン染色やコンゴーレッド染色陽性であることから鑑別可能.


治療

 遺伝性疾患であり,有効な治療法はない.整容的に皮疹の削除術などを行われることもある.

【予後と経過】生命予後はよいが,感冒などによる声門浮腫で呼吸困難を起こすこともあるため,耳鼻咽喉科による経過観察が必要である.

□患者説明のポイント‍ 遺伝性疾患であり,根本的治療法はないことを理解・納得してもらう.生命にかかわることはほとんどないが,感冒の際などにはすぐに診てもらえるように耳鼻咽喉科に定期的にフォローしてもらうことを

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