診療支援
治療

ステロイド萎縮症
Glucocorticosteroid induced skin atrophy
山中 恵一
(三重大学教授)

病態

 強力な抗炎症作用,免疫抑制作用,細胞増殖抑制作用を有するステロイドの副作用であるが,長期の内服や外用により皮膚萎縮,ステロイド酒皶,痤瘡,皮膚感染症などを生じうる.皮膚の菲薄化・萎縮ゆえ,毛細血管を保護する組織が脆弱となり,軽微な外力で毛細血管壁が破壊されて皮下出血や紫斑を生じたり,皮膚損傷が起こる場合がある.

 またトリアムシノロンアセトニドなどの皮下あるいは筋肉内注射は,難治性のアレルギーおよび炎症性皮膚疾患に使用されてきた.同薬剤と麻酔薬の混合関節内または腱内投与は,整形外科の分野における関節炎および腱滑膜炎の一般的な治療法である.ステロイド局注後の脂肪萎縮症は10~30歳代の女性に多い.筋肉が薄いために局所注射したステロイドが皮下脂肪に漏れ出しやすく,投与部位から近位側にかけて,ステロイドによる脂肪分解促進,コラーゲン合成抑制が生じる.薬剤が皮下脂肪に流入しないように確実に筋肉内に注入,あるいは炎症関節に投与せねばならない.ステロイド局注後の萎縮,陥凹は回復しないことが多い.

【病因・発症機序】ステロイドが本来有する細胞増殖抑制作用による皮膚萎縮が主因である.局所投与されたステロイドは脂肪分解を誘発し,コラーゲン線維の減少により皮膚の萎縮が顕著になる.血管は萎縮した周辺組織から浮き出たように目立ち,血管壁の脆弱性も誘発され,紫斑形成に寄与する.


診断

 皮膚の菲薄化と皮下脂肪の減少のため,血管が透見できる.

【鑑別診断で想記すべき疾患】全身性の場合,まれではあるが副腎不全や栄養障害.上肢などの疼痛後の皮膚および皮下組織の萎縮の際にはcomplex regional pain syndrome(複合性局所疼痛症候群).

【問診で聞くべきこと】これまでの処方歴,治療歴.

【必要な検査とその所見】皮膚生検あるいはMRIも可能である.


治療

 皮膚および皮下組織の萎縮に関しての治療はな

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